この記事の連載

 入浴という行為が、悪の象徴だった国々と時代があった。「古代ローマ」から「風呂キャンセル」まで、美容の視点から、人類の清潔と不潔の歴史を読み解く。


分水嶺はズバリ宗教。“自らを浄めるべき”が、仏教の教え

 西洋の入浴悪がキリスト教の教えに由来するなら、仏教は全く逆、“汚れを落とし自らを浄めよ”と説く。これぞ東西で清潔不潔を完全に分けた決定的な理由。

 とりわけ自然物を神として敬う日本古来の神道は、川や滝や海で体を浄める「禊」という水浴を罪や穢れなどの不浄を取り除く行為としたが、それこそが日本の風呂の起源と考えていい。

 ただ約6000年前の縄文時代、湧き出た泉(たぶん温泉)で沐浴していた遺跡も見つかっている。約1万年も続いた縄文時代は争い事もない幸せな社会だったと言うが、入浴習慣が幸せに寄与していたのは確か。

 贅沢ローマ風呂は日本の弥生時代に当たるが、どちらにせよ日本とローマ帝国こそ清潔好きを古代から競った国。日本は堂々たる清潔大国なのである。

2024.11.18(月)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)

CREA 2024年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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