平安時代の洗髪は年数回…今、それが見直されるワケ
さて、気になるのは昔のシャンプー。それこそほとんどの時代、日本女性の髪は長かったわけで、古代は穀物を粉状にし、櫛でとかしつけるだけだった。水で洗う習慣は飛鳥時代からで、米の研ぎ汁や灰汁で洗い、香油をつけたのは平安時代。とは言え、それも年に数回程度だったとか。
信じ難しと思いきや、実は今、髪の洗いすぎが問題となり、湯で洗い流すのみの湯シャンが復活の兆し。キューティクルはオイルで整えるというまさに平安時代のお垂髪式シャンプーが注目なのだ。毎日の体洗いもダブル洗顔も洗いすぎを見直す方向にあるということ。
そう、日本が積み上げてきた入浴善に基づく清潔至上主義は、本当に正しかったのだろうかと、昨今小さな疑念が生まれてもいる。かすかな匂いにも敏感に反応する日本人の神経質な嗅覚は“スメルハラスメント”という新しいストレスを生み、毎日風呂に入らなければという脅迫観念が今や“風呂キャンセル”という新しい憂鬱を生んでいる。花粉症などのアレルギーも過度な清潔文化が産んだものという見方すらある。
不潔は御免だが清潔すぎるのも人間を弱くすることの証。ましてや他人が触るボールペンにも触れない清潔症候群の人が21世紀以降増えてきたのも、社会的な問題と言えそう。清潔好きが過ぎれば、相手を不潔な存在とみなし、対人関係をも脅かす。
人間、不潔では滅多に死なないと中世ヨーロッパは証明した。ムキになって洗いすぎる脅迫観念だけはもう捨てよう。健全な社会と力強い綺麗を手に入れるため!
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齋藤 薫 (さいとう かおる)
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌で多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。CREAには1989年の創刊以来、常に寄稿している
Column
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2024.11.18(月)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)