奈良時代にはすでに洞窟風呂で蒸気浴も
日本の“浴場”の始まりは、奈良時代に見る洞窟風呂。湯に浸かるのではなく蒸気浴で、岩山の穴の中で青葉や枯木をたき、海水などを含ませたムシロの上で蒸気を浴びつつ汗を流した。まさにサウナ。
薬草蒸しの岩盤浴といってもよく、それってあまりに今時すぎない? ときっと驚くはず。体の浄化のみならず健康法でもあったようだ。
ただ、湯を沸かす入浴様式は6世紀に仏教に伴って伝来、まさに“業”を洗い流す入浴は「七病を除き、七福を得る」との教えから、多くの寺院に浴堂ができ、“施浴”として近所の民や旅人にも開放され、利他の役割も担ったのだ。近代の銭湯がお寺風の建物だったのも、実はこの時代の名残なのである。
2024.11.18(月)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
CREA 2024年秋号
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この記事の掲載号
CREA
2024年秋号
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定価980円
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