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「ゾゾゾ」の初期案は動画じゃなかった

――そこからホラー作品を撮るようになられたのですか。

皆口 中学生の頃、友達が持っていたハンディカムで川に飛び込んだり、心霊スポットに行く様子を撮ったりしていましたが、ホラー映画は撮っていませんでした。劇映画と自分たちが撮っているドキュメンタリー動画では、作り方が全く違うと幼いなりに理解していたのでしょう。でも、当時から「テレビだったらここで見やすい編集を入れるだろうなぁ」と心の中で想像はしていたので、後の「ゾゾゾ」の原点なのかもしれません。

――実際に「ゾゾゾ」の企画が動き出したのはいつなのでしょう。

皆口 転職活動して入ったベンチャー企業で「ゾゾゾ」のパーソナリティーになる落合さんと出会いました。実は落合さんはその会社の社長で、当時はすごく硬派な人でした(笑)。

 あるとき落合さんに「いい企画ない?」と声をかけられて、心霊スポットを食べログ的に紹介するサイトの企画を思いついたんですが、そう簡単にスポンサーは付かないだろうと、企画の方向性を学生時代の心霊スポット撮影とつなげて、YouTubeで「ゾゾゾ」という形に昇華したのが始まりです。

――バラエティ色のある「ゾゾゾ」とは対照的な「フェイクドキュメンタリーQ」はどのように生まれたのですか。

皆口 「ゾゾゾ」が人気になったことを機に、寺内監督の「心霊マスターテープ」にカメオ出演させていただきました。さらに幸運なことに監督から「YouTubeをやりたい」とお話をいただいて、念願のフェイクドキュメンタリーを一緒に作ることになったんです。

――日本で今フェイクドキュメンタリー作品が盛り上がってきている印象はありますか。

皆口 日本の観客はここ10年ほど、“やらせ的なもの・騙されること”を嫌悪するようになった印象があって、ホラーの作り手もそれに沿った作品作りをしてきた印象があります。けれど、2020年ごろから、大森さんの手がけた作品群や背筋さんの小説『近畿地方のある場所について』のように、再び騙されるおもしろさを孕んだ作品に脚光が集まってきた感があります。

2024.05.07(火)
文=むくろ幽介
写真=細田 忠