シリーズではじめて「主役級の活躍」をみせる草薙

 ただし、新作映画『沈黙のパレード』における草薙の役割は、これまでの映像作品とはあきらかに違う。原作者の東野圭吾が「草薙の苦悩と友情の物語」と称する原作小説の重要な要素が映画の脚本にもそのまま反映され、シリーズで初めて草薙が主役級の活躍をみせるのだ。

 

「じつは『沈黙のパレード』の映画化が決まったころに、『打て』と指示がありました。『たいへんお待たせしました、次の打席では大きく振っていただきます』と(笑)。

 とはいえ自分の役割を果たすという意味ではこれまでとやることは変わりませんが、今回はどこまでやっていいのか、さじ加減がむずかしかった。だから撮影前に西谷弘監督とちょこちょこ会って相談しましたね。

 たとえば脚本からは漏れた原作のエピソードをふまえた芝居のアイデアを提案したり、それくらいのところまでは踏み込みました。ただ、あくまでも今回の自分の役割を全うするためにやったことであって、私利私欲はなかったです」

「僕も原作を読むとき、湯川には福山さんを当てはめますが…」

 北村の草薙への「客観」は徹底していて、新しい原作を手にするときですら自らと草薙を重ねて読むことはない。

「草薙は僕だと思いながら原作を読む方がいらっしゃるのはありがたいことですし、一度でもドラマや映画を見ればそうなるのは自然なことだと思います。僕も原作を読むとき、湯川には福山さんを当てはめますから。

 ですが、草薙だけはまったく別の人物をイメージしながら読むんです。その人が草薙役を演じている姿を客観的に想像したうえで『自分だったらこうする』とあれこれアイデアを練る。ちなみに僕が想像する“草薙役”は実在の人物ですが、だれなのかは言いません(笑)」

 つねにそんな姿勢だから、『沈黙のパレード』の原作を初めて読んだときも自分の役のことより「この物語をいったいどうやって映画にするのだろう?」と気になって仕方がなかった。

2024.05.01(水)
文=岸良ゆか
写真=三宅史郎
スタイリング=kaz(Balance)
ヘアメイク=安井朋美(T-FACE)
衣装協力=バレナ、パイカジ