9月16日に公開された映画「沈黙のパレード」は、福山雅治演じる天才物理学者・湯川学が難事件を解決する「ガリレオ」シリーズの最新作だ。9年ぶりとなる本作では、変わり者の湯川に捜査協力を依頼する女性刑事・内海薫(柴咲コウ)や先輩刑事の草薙俊平(北村一輝)といったおなじみのキャストが再集結。小説のスタートから四半世紀、最初のドラマ化からは15年が経つ。原作者の東野圭吾と、テレビドラマ・映画を通して湯川学を演じてきた福山雅治。プライベートでも親交の深いふたりが、本作や「ガリレオ」シリーズについて語り合った。月刊「文藝春秋」2022年10月号「『ガリレオ』の秘密」より一部を転載します。

 
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スタッフたちに「あ、湯川さんだ」と思われたら正解

福山 9年ぶり――といっても、あまり久しぶりな感じは僕は全然してないんです。あっという間に時間が経っていて、ブランクは感じなかったですね。やっぱり自分の中にずっと、湯川学という存在がいたんだなと。

東野 映像化がなかった間、僕もずっと「ガリレオ」を書いているわけで、9年ぶりという感覚はないですね。それに、僕は書く時に映像を思い浮かべながら書くほうなんですが、はっきり言って、湯川は福山さんなんですよ。福山さんとは時々お会いしていますから9年前の福山さんじゃなくて今の福山さんを見て、それで想像して書いている。だから、久しぶりの映画でもあんまり抵抗がなかったですね。

福山 「沈黙のパレード」の映画を撮る前に、スペシャルドラマ「禁断の魔術」(9月17日放送・フジテレビ系列)の撮影から入ったんです。その衣装合わせの時に、まずオールスタッフで集まります。カメラさん、音声さん、照明さん全員に見てもらうんです。衣装を着て湯川さんになってスタッフさん達の前に出た時、「あ、湯川さんだ」と思ってもらえたら、それが正解だと考えてました。だからその衣装合わせが一番緊張しましたね。そこで「あれっ、なんか違っちゃったな」と思われちゃったら、これはだいぶ調整しなきゃなと思っていたんですけど、いい手応えだったと思います。「あ、湯川さんだ」という空気だったので。

2022.10.04(火)
文=大矢博子