“亡くなった母親役”で8年ぶりのアニメーション声優
現在公開中の映画『神在月のこども』にて、8年ぶりにアニメーションの声優を担当した女優の柴咲コウさん。
本作は、全国の神々が出雲に集い、翌年の縁を結ぶ会議を行うという云われをモチーフに、12歳の少女カンナが自らの足で人々と神々の境界をまたぎ、出雲を目指す冒険を描いている。
カンナを蒔田彩珠さんが、そしてカンナの母・弥生を柴咲さんが演じた。
ともに走ることが大好きだった仲の良い母娘。しかし、弥生はカンナが11歳のときにこの世を去ってしまい、以来カンナは大好きだった走ることと向き合えなくなっている。
作品の内容とテーマに深く共感したという柴咲さんに、カンナのように乗り越える壁ができたときの対処法や、現在の暮らしにいたるまで、しなやかに、そして健やかに歩み続けるヒントをインタビューした。
――柴咲さんのアニメーション映画の出演(声優)は『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』(2013年)以来です。『神在月のこども』のオファーを受けた決め手は何でしたか?
企画を伺ったとき、神様とミッションを与えられた主人公カンナのストーリーに心惹かれました。日本は神々が宿る島だと思うのですが、自分が知っていたつもりだったけれど、新たな日本の魅力や素敵なところを再発見できる素晴らしい作品かもしれない、と思ったんです。
もう一点は、台本を読んでいて、登場人物の「とはいっても……生きるって大変だよね」という人物描写が、カンナを中心にすごく伝わってきたんです。自分事として生きることを捉えられる作品だと思ったので、お引き受けしました。
カンナは母親を病気で亡くして、そこから物語がスタートしますけど、子どもだからといって必ずしも幸せではないというか、自分で境遇や環境は選べない、ひとりで抱えてしまう思いは年齢関係なくあると思うんです。誰もが共感できる作品だと感じました。
――実際、声を吹き込むにあたっては、どんなイメージで臨まれたんでしょうか?
最初に「こう仕上がる予定です」とキャラクターの絵を渡されていたので、そこからインスピレーションを受けて、「快活な話し方かな?」、「あ、こういう声のトーンかもしれないな?」と考えて作っていきました。弥生の声を表すにあたって、母性を出すというよりも、ひとりの人間として輝いている女性がいいな、と思っていたんです。カンナ自身が弥生のその輝きに憧れて「追い付きたい」という思い、負けず嫌いのところにつながればと思いました。
――柴咲さんご自身をそのまま生かした点もありますか?
いやあ、どうだろう……? あまりないかもしれないです(笑)。
2021.10.23(土)
文=赤山恭子
撮影=釜谷洋史