世界最大級のクラシック音楽祭と言われる「ラ・フォル・ジュルネ」。日本では2005年から開催され、“推し”の作曲家や演奏家のコンサートを気軽に楽しめるようになりました。
今年の「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024(以降、LFJ2024)」は、東京国際フォーラムで5月3日~5日の3日間、5つのホールで90公演が開催されます。
「ラ・フォル・ジュルネ」の創始者であり、世界各地で年間約1500もの公演を手掛ける音楽プロデューサーのルネ・マルタンさんに、コンサートの楽しみ方を伺いました。
「U2」のライブのような熱狂をクラシックにも
――どんなことがきっかけとなって「ラ・フォル・ジュルネ」という音楽祭を企画されたのですか?
私がクラシック音楽と出会ったのは、20歳の時。スヴャトスラフ・リヒテルのピアノコンサートを聴きに行き、彼の演奏に衝撃を受けました。その後、経営について学び、音楽の道を歩むことに。南仏で行われるピアノフェスティバル「ラ・ロック・ダンテロン」を手がけ、今では世界最大級に成長しました。
幼少期はクラシック音楽一辺倒ではなく、ジャズやロックの曲も好きでした。1993年にフランス・ナントのサッカースタジアムで「U2」のライブで3万5000人もの若い聴衆が魅了されている姿を目にし、「どうして若者は同じようにクラシックに熱狂しないのか?」と自問自答しました。
その結果、若い世代の人たちが、ベートーヴェンやシューベルトの曲と出会う機会がないことに気づいたんです。若者層がクラシック音楽と出会うきっかけをつくらなければならない、その思いで「ラ・フォル・ジュルネ」のコンセプトが生まれました。
演奏は45分という短い時間、チケットはお手頃な価格という条件で、皆が気安く来られるようにしたい――1995年にナントで開催した「ラ・フォル・ジュルネ」は、それらを実現したことで、クラシックコンサートの概念を打ち破って大成功を収めました。その後、2000年にポルトガル・リスボン、2005年に日本と開催地が拡大されていきました。
完璧なものに触れると、人生は大きく変わる
――クラシック音楽と、生の演奏を聴くことの素晴らしさについて教えてください。
クラシック音楽は、純粋なまでのむき出しの感情でありつつ、非常に洗練されているものだと思います。
以前、クリスチャン・ディオールのメゾンでコンサートをオーガナイズすることがありました。ディオールのドレスを目にした時、“完璧だ”と思うのと同時に、モーツァルトやベートーヴェンの作品にも同様の完成度の高さを感じました。そういう完璧なものに触れると、人の人生は大きく変わります。天から降ってきたような心を揺さぶるハーモニーに身を置くというのは、奇跡のように素晴らしいことなのです。
しかも生演奏であれば、音の響きを体が直に感じることができることができます。音を浴びるという感覚でしょうか。同じ曲を同じ人が演奏しても、スピーカーなどの音と生の音ではまったく違うものです。それを「ラ・フォル・ジュルネ」で体感していただきたいです。
2024.03.22(金)
文=山下シオン