次世代を担う天才ピアニストに注目!

 今回のテーマは「ORIGINES(オリジン)―すべてはここからはじまった」。音楽の起源、ルーツに立ち帰ることを意味するテーマを通して音楽の伝統にスポットライトを当て、充実した内容の公演が数多く上演される。

――3日間で行われるコンサートのなかでもおすすめのプログラムは?

 私たちは知名度の高さよりも、輝かしい未来を待ち受けているような若手のアーティストを選ぶようにしていますから、「LFJ2024」は若き才能を発掘できる場でもあります。「CREA」の読者の方と同世代の4人のアーティストが演奏するコンサートはいかがでしょうか。

唯一無二の天才ピアニスト、マリー=アンジュ・グッチ

 とても聡明で、音楽性も素晴らしく、ピアノでは最も才能を持っているのではないでしょうか。1997年、アルバニア生まれで、13歳でパリ国立高等音楽院のピアノ科に飛び級入学し、16歳で最優秀の成績で修士課程を卒業し、同音楽院の博士課程、さらにソルボンヌ大学の修士課程で研鑽を積むというありえないほどの経歴を持つ頭脳明晰な方なので、ヨーロッパの音楽界から注目を浴びている屈指のピアニストです。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を演奏していただくのですが、とてもロマンティックな曲なので楽しんでいただけると思います。

公演番号:212(ホールA) 演奏曲:ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30」

音楽一家出身の才媛、リヤ・ペトロヴァ(ヴァイオリン)

 ブルガリアの音楽家の家庭に生まれ、4歳からヴァイオリンを始め、その後ブリュッセルのエリザベート王妃音楽院やベルリンのハンス・アイスラー音楽大学などで研鑽を積んで、2016年にはデンマークのカール・ニールセン国際コンクールで優勝した実力の持ち主です。使用している楽器もストラディバリウスの弟子カルロ・ベルゴンツィが1735年にクレモナで製作した「ヘリオス」が貸与されています。素晴らしい楽器の音色で魅了してくれます。

公演番号:214(ホールA) 演奏曲:ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61」

衣装デザインも手がける多才な表現者、ヴァランティーヌ・ミショー(ソプラノ・サクソフォーン)

 類い稀な才能を持つサクソフォーン奏者です。オートクチュールが好きで、自身の衣装も自らデザインしています。表現手段を選ばない人で、今回はスウェーデンの作曲家による現代音楽を演奏するのですが、「ピーコック・テールズ(孔雀物語)」という曲を演奏します。ほかにも弟のガブリエル・ミショーのパーカッションとのデュオのプログラムでは、鳥をテーマにした様々な作品を演奏します。一つの専門性だけではなく、多岐にわたる興味を表現するところが聴き手の視野も広げてくれるのではないでしょうか。

公演番号:223(ホールC) 演奏曲:ヒルボリ「ピーコック・テールズ(孔雀物語)―ソプラノ・サクソフォーンとオーケストラによるミレニアム版」、公演番号:147(G409) 公演概要:〈天国の鳥たち〉、公演番号:246(G409) 公演概要:〈天国の鳥たち〉

異なるジャンルを経て出会った奇跡のアンサンブル、レ・イティネラント(ア・カペラ・トリオ)

 ミュージカルのワークショップで出会った3人の女性歌手で結成した「ア・カペラ」のアンサンブルです。マノン・クザン、エロディ・ポン、ポーリーヌ・ラングロワ・ド・スヴァルテ、エロディの美しい三重唱とパーカッションが神秘的なステージを繰り広げると思います。彼女達は11の音楽スタイル、9世紀にわたる40の異なる言語をレパートリーにし、大成功を収めました。今回のLFJ2024のテーマと同じ「ORIGINES~オリジン~」というアルバムも発表し、起源というものを掘り下げていて、コンサートも〈オリジン〉と題しています。

公演番号:136(ホールD7) 公演概要:〈オリジン〉、公演番号:347(G409) 公演概要:〈オリジン〉

2024.03.22(金)
文=山下シオン