この記事の連載

はじめに買うといいもの

 はじめに買われるなら自分が毎日使っているうつわ、飯碗やマグカップなどがいいと思いますが、こちらの連載を読ませていただいたらもう皆さんが同様のことをおっしゃっていますね(笑)。

 そこで考えたのですが、私は急須をおすすめしたいです。お茶を淹れるためだけの道具ではありますが、急須とは「注ぐ」という動作を含めて楽しむもの。ただ何かをのせるうつわとは別種の面白さがあります。

 淹れる、注ぐ、最後に水を切るといった一連の「操作する楽しみ」は独特のものです。日本人の文化に根付いてきた道具の良さを、今の生活にも取り入れてほしい。誰かをもてなすときにも、ひとりで喫茶を楽しむにも、急須はいいものです。

「多用的に使う感覚」を持ってうつわを選ぶ

 うつわを選ぶとなったら、多目的に使えるものが選ばれがちではないでしょうか。それもいいのですが、私は多目的というより「多用的に使う感覚」を持っていただきたいと思っています。単なる小皿でも取り皿として使うだけでなく、ガラスコップの受け皿やソーサー的に使ってもいいし、小鉢の下皿にしてアクセントにしてもいい。そんな取り合わせもうつわの楽しみ方ですし、見立ての面白さでもある。いろんな使い方を自由に発想し、見つける楽しさを知っていただきたいんです。

 「荻窪 銀花」はガラスのうつわにも力を入れています。吹きガラス(※ガラス成形技法のひとつで、パイプに息を吹き込んで作るもの)は手仕事ならではのぬくもりがあって、おいしい口当たりを直接感じられるものですね。焼き物にはない魅力があり、夏だけでなく四季を通して使ってほしい。マグや湯呑み同様、マイグラスもぜひ気に入ったものを見つけて、暮らしに取り入れてほしいと思います。

白央篤司

フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」がメインテーマ。主な著書に、日本各地に暮らす18人のごく日常の鍋とその人生を追った『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)がある。
https://www.instagram.com/hakuo416/

次の話を読む「うつわ集め」を始めたい人必見! 賢者に学ぶ、暮らしにフィットする “出番の多いうつわ”の選び方

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Column

うつわのある暮らし

食を彩る素敵なうつわとともに日々を過ごす。憧れるけどなにから始めたら? フードライターの白央篤司さんが、「うつわのある暮らし」を始めるヒントを探りに、うつわの専門家を訪ねました。

2024.02.06(火)
文=白央篤司
撮影=平松市聖