たくさんの本に囲まれて育ち、読書家として知られる俳優の上白石萌音さん(25)。なかでも絵本はかけがえのない存在だという。
今回訪ねたのは、大好きな絵本作家・ヨシタケシンスケさん(50)のアトリエ。念願かなっての対談に終始、大興奮の上白石さん。親子ほども年の離れた2人の共通言語は、ほかでもない絵本だ。初対面とは思えない意気投合ぶりで、ヨシタケ作品の魅力から、デビュー秘話、意外な共通点、演技論まで存分に語り合ってもらった。
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上白石 お邪魔しまーす。
ヨシタケ どうぞ、ここが僕のアトリエです。まだ引っ越しの途中ですが……これが作業机。
上白石 ヨシタケさんの原画は小さいんですよね?
ヨシタケ 普段描き溜めているものを保存しているのがこのファイルです。A6判の紙に描き始めてもう20年くらい経ちます。
上白石 絵がちっちゃい……!
ヨシタケ 小さく描いて……。
上白石 引き伸ばしてるんだあ。ヨシタケさんの線にある、不思議なズレみたいなの、「なんだろう」ってずっと思ってたんです。
ヨシタケ そう、小さく描いたものを拡大すると線がぶれるんです。ペンはこのコピックのマルチライナーを使って、こんなふうに……。
上白石 あっという間に!
ヨシタケ なにせ、ちっちゃいんでねぇ。最近は老眼が進んで、自分の絵が見えなくなってきて(笑)。これ、よかったらどうぞ。
上白石 うわあ〜! ありがとうございます、宝物にします。なんだかもう、満足しました(笑)。
ヨシタケさんの本は「逃げ道」を用意してくれる
上白石 ヨシタケさんの本はもう何冊も読んでいて、大好きです。いつ出会ったか覚えていないけれど、ビートルズみたいに、気づいたらそこにいました。
ヨシタケ いやあ、ありがとうございます。
上白石 疲れている人や、ちょっとうまくいってない人に、「大丈夫だよ」と言うんじゃなくて、ある種の「逃げ道」を用意してくださるというか、メイン通りじゃない路地を作ってくれる。「これでもいいんじゃない?」って。その提案がとってもリアルで、「あ、この考え方なら私にもできる」と思えるんです。
2023.12.21(木)
出典元=「文藝春秋」2024年1月号