ヨシタケ お目が高い!

 上白石 ほんとですか? 合ってますか?

 ヨシタケ さすがです!(笑)

 上白石 は〜っ、よかった〜。これ、緊張するんですよ、作者を目の前にして作品の感想を伝えるの。

 ヨシタケ ね。逆の立場だったら僕、嫌ですもん、だって。仕事とはいえ大変な……お察しします。

 上白石 とんでもない。

 

「私だけじゃないんだ」

 ヨシタケ でも、仰る通りで、僕自身、逃げ道がほしいんですよね。自分が言ってほしいこと、言ってほしかったことを言っているだけというか。できないことばかりで、うまくいかないことばかりだったから、子どもの頃こういうふうに言ってもらえたら助かっただろうにって。よく言うのは、自分用の松葉杖を作っている感覚なんです。世のため人のためではなくて、「僕だったらこう言ってもらえたら助かるんですけど、どうですかねえ?」と提案していくことしか、僕にはできない。

 上白石 私、『あつかったら ぬげばいい』(白泉社、2020年)が大好きで。バイブルと言っていいくらい読んでます。「もしこうだったら、こうすればいい」の提案が、必ずしもいい子のやり方ではなくて。人の不幸を願ってしまったら、〈なみうちぎわに かけばいい〉とか。「こういうこと思ってる人、私だけじゃないんだ」ってすごく力が抜ける。かと思えば、思いもつかないような素敵な発想も詰まっていて。いちばん好きなのが、〈おとなでいるのに つかれたら〉〈あしのうらを じめんから はなせばいい〉という言葉。

 ヨシタケ 嬉しいです、すごく。

 上白石 初めて読んだ時ハッとしました。たったこれだけのことで、子どもに戻ったような、重力から解放された気持ちになれた。妹(上白石萌歌)もヨシタケさんの絵本が大好きで、そのページが好きで。だからよく一緒にごはんを食べに行った帰りに、「ちょっと足の裏、地面から離そう」って、寄り道してブランコ乗ったりするんです。アハハ。

2023.12.21(木)
出典元=「文藝春秋」2024年1月号