子どもの心を大切に懸命に舞台に立ち続ける

 團子さんは、今回の撮影でもカメラの前に立つと、瞬時に華やかなオーラを放った。役者としても著しい成長を遂げているが、『傾城反魂香』でも、これまでにない感覚を味わったらしい。

「今まで出演させていただいた作品で一番、役の気持ちで居続けることが難しかったです。僕が演じた修理之助は、一度舞台に出ると40分間出続けなのですが、例えば20分出て引っ込むのが3回ある方が、舞台に立っている合計時間が長くても、引っ込むことができるので気持ちを集中して保ちやすいんです。舞台上で40分間、ずっとその役の気持ちでいるのは難しくて、どうしても雑念が湧いてきてしまいます。これまであまり出続けのお役をさせていただいたことはなかったので、新たな発見でした。

 目の前で師匠と兄弟子夫婦が話されているときに心のリアクションをし続けるのは難しかったけれど、絶対にお役の気持ちでしっかり反応したいという思いがあったので、なんとかくらいつくようにしていました」と、修理之助を演じていたときの心境を一生懸命に語ってくれた。

 そして團子さんにとっての次なる“初役”は三大義太夫狂言の一つ『義経千本桜』の「道行初音旅」の佐藤忠信実は源九郎狐。その扮装写真のために一足早く化粧に取り組んだ際のお話も伺った。

「忠信の化粧は初めてだったのでじいじのお弟子さん(市川)猿紫さんに細かい指導をしていただきました。じいじの忠信の舞台写真などを参考にしますが、顔が違えば見え方が違ってきます。なので、忠信の化粧と眉や目の化粧が似ている『傾城反魂香』の狩野雅楽之助を演じたときの写真も参考にしました」

 歌舞伎ならではの化粧は全く別の人物に変身できるが、どの時点で役のスイッチが入るのだろう。

「その役になるぞ、と切り替えるというより、ただ頑張ると思って演じるというほうが近いです」

2023.11.26(日)
Text=Shion Yamashita
Photographs=Yuki Kumagai
Styling=Satoshi Takano
Hair & Make-up=Yoko Fuseya
Backdrops=Backgrounds factory

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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