プレッシャーは感じないタイプ。それよりも楽しさが勝っているから

 19歳の等身大の團子さんに触れるべく、弱みと強みを聞いてみた。

「弱みは3つあって、継続力がないところ、時間が守れないところ、そして調子に乗りやすいところです。謙虚になりたいです。強みは素直なところ。あとはポジティブだと思います。僕の性格は子どものころから全く変わっていなくて、心はそのままなんです。子どもっぽい部分も変わらずたくさんあります。

 『新・水滸伝』のお稽古で、その場で何か面白いことやハプニングが起きたとき、子役さんと笑うタイミングなど“ツボ”が全く同じことに気がつきました。自分の心が子どものままであることが改めてわかりました(笑)」

 それでは日常生活で欠かせないことはあるだろうか?

「お風呂が好きで、毎日30分くらいお湯に浸りながら、NewJeansとかBTSとかの曲を聴いたり、歌ったりします。それからお米を毎日たくさん食べます。お腹が空いているときは一回の食事で2合食べることもあります(笑)」

 この“お米好き”が導いた結果なのか、もう少しで身長が180センチメートルに達しそうなほどに成長しているとのこと。19歳らしい一面もありながら、團子さんは自己分析ができていて、ちゃんと“自分”を知っている。

 20歳を目前にしているが、これからの人生ではどんな地図を描いているのだろうか。

「歌舞伎をずっと一生懸命に頑張りたいです。自分の感情がわっと高まったときだけではなく、毎日コツコツと継続していきたいです。僕自身はあまりプレッシャーを感じていなくって、楽しいという気持ちのほうが勝っています。でも舞台をいつも観てくれている母は、演出のことはわからなくても、僕の精神状態みたいなものに気づいてくれるんです。あらゆる場面で母からのアドバイスに助けてもらっています。

 僕には感情任せな面があって、そういうところを直していかなきゃな、と思いますが、いつまでも子どもが抱くようなワクワクする感情は舞台でも大切だと思うので、これからも大事にしたいです」

 歌舞伎の未来に光を感じさせた。

市川團子(いちかわ・だんこ)

2004年、東京都出身。父は9代目市川中車、祖父は2代目市川猿翁。12年6月、新橋演舞場でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のワカタケル役で5代目市川團子を名乗り、初舞台。13年10月、国立劇場『春興鏡獅子』の胡蝶の精で、国立劇場賞特別賞を受賞。

市川猿翁監修 三代猿之助四十八撰の内
『義経千本桜』忠信篇

立飛グループ創立100周年記念事業として行われる「立川立飛歌舞伎特別公演」では、三大義太夫狂言の一つ『義経千本桜』が上演される。序幕「伏見稲荷鳥居前」、二幕目「道行初音旅」、大詰「川連法眼館」はそれぞれ配役を変え、佐藤忠信実は源九郎狐を中村鷹之資、市川團子、市川青虎、静御前を市川笑也、中村壱太郎が演じる。

衣装クレジット

セットアップジャケット 129,000円、シャツ 45,200円、セットアップパンツ 65,000円/ビブリオテーク シューズ/スタイリスト私物

2023.11.26(日)
Text=Shion Yamashita
Photographs=Yuki Kumagai
Styling=Satoshi Takano
Hair & Make-up=Yoko Fuseya
Backdrops=Backgrounds factory

CREA 2023年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

永久保存版 偏愛の京都

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