大木 でもササポン、しばらくシェアハウスをやめていたんですよね?
ササポン そうだね、2010年頃にはやめていた。その頃になると、世間的にもシェアハウスという概念が浸透してきて、「夢を追う」というよりは「安く住みたい」という理由の人が増えてきたんだよ。不動産屋さんでもシェアを目的に賃貸することもできるようになってきたから、もうやめてもいいかな、って。ちょうど1階の部屋に住んでいた男の子が海外に行くことが決まったから、そのタイミングで、他の入居者には申し訳なかったけど、「やめます」と。
声まで別人になっていた大木さん
――お姉さんが大木さんにシェアハウスを勧めた際、「今のお前は誰かと一緒に住んだほうがいい。とにかく話し相手が必要だ」と説得したと、小説では書かれていました。
姉 アキがササポンの家に住むようになるのは2018年なんですけど、その前に下北沢で偶然アキに遭遇したことがあったんです。遠くから「お姉ちゃ~ん」って手を振ってやって来たんだけど、あまりにもアイドル時代と容貌が変わりすぎていて、びっくりして。
SNSとかに載せる写真では痩せて見えたけど、実物は、ものすごいふっくらしてたし、浮腫んでたの。声までくぐもっているように感じた。
大木 その頃、慣れない記者の仕事に全力投球してたから……。かなり洋服もサイズアップしてたかもしれない。
姉「ちょっと顔色悪いよ?」と最初は茶化していたんだけど、そのうち、どんどん調子が悪そうになって……。顔が灰色だったんだから! うちに泊まりに来たときなんかも、なんだか全てにおいて投げやりで、食べる量がすごくて。普通、カマンベールチーズってカットされた一切れずつ食べるものなのに、アキはホールごと食べてたの(笑)。「丸いまま食べる人いるの!?」って思ったんだけど、なんかそれすらつっこめない雰囲気になっちゃってた。
大木 たしかに、あの頃のお姉ちゃんは、私に対して遠慮がちだったよね。
姉 アイドルを辞めたあとに、せっかく周囲の人に貰って得た仕事だから、ものすごくそれにしがみついている感じがして、何を言っても響かなそうでした。あと覚えているのは、アキが履いていたパンプス、革が剥げちゃってボロボロだったこと。
2023.11.10(金)
取材・構成=加山竜司