透明感あふれる笑顔と、ナチュラルな雰囲気で人々を魅了する俳優の川栄李奈さん。
テレビ、映画、舞台と縦横無尽に活躍する川栄さんの最新出演作は、WOWOWの連続ドラマ『オレは死んじまったゼ!』にて、自身初となる幽霊役だ。
ある日突然死んじまって幽霊になった桜田和彦(柳楽優弥さん)を迎え入れる先輩幽霊の佐々木 咲を、川栄さんは好演。元看護士の咲は過労が原因で亡くなったのだが、実は離婚歴があり娘を現世に残していた。口が悪くぶっきらぼうな咲が探求する「愛とはどういうものでしょう?」が2話目で描かれる。
これまで多くの作品との出会いを重ねてきた川栄さんだが、彼女の芸能界デビューといえば、15歳でAKB48のメンバーになったことが始まりだった。アイドルから俳優業へとステージを移し、その才能をさらに開眼させた川栄さんは「役者は一生続けなければ」と仕事への覚悟と生きがいを見せる。穏やかな見た目とはうらはら、そのタフネスな素顔を覗いてみた。
ボケ&ツッコミが飛び交う楽しい現場でした
――『オレは死んじまったゼ!』はコメディの要素あり、切ない要素ありのオリジナリティあふれるドラマです。作品をご覧になって、いかがでしたか?
最初、第1話を見たときに撮り方や映像の色合いが、まるで誰かのミュージックビデオを見ているようだったので「わ、すごくオシャレだな!」と驚きました。このドラマは出てくる人物が私も含め幽霊ばかりですけど、ヒューマンドラマとして楽しめて、見終わったらほっこりする、ちょっと前向きになれるような作品だと思います。1話30分という時間もあっという間ですし、すごく見やすかったです。
――30分尺の作品だと、普段のドラマの現場と違ったこともあったんでしょうか?
感覚的に1話1話があっという間でした。『オレは死んじまったゼ!』では、ひとりひとりのメイン回みたいなものがあって、私は2話(がメイン)なんです。2話を撮って、その後撮影が1週間ぐらい空いて「あれ、もう3話撮り終わっている!?」みたいなことが多かったので不思議な気持ちではありました。あとは、今回皆さんとすごく仲良くなれたので、撮影が本当に楽しかったんです。
――いい現場だったんですね! 主演の柳楽さんとは以前も共演していましたが、また違った印象も持ちましたか?
前回共演したとき、柳楽さんは病気で亡くなってしまう役だったので減量をされていたんです。というのもあり、当時ももちろんお話はしたんですけど、そんなに明るく「イエイ!」みたいな雰囲気ではなく(笑)、今回ほどは仲良くなりませんでした。柳楽さんはフランクで、本当に気取っていない方という印象です。力が入っているわけでもないのに、お芝居はきちんと決めてきますし、そういうところがすごいなと感じていました。柳楽さんの雰囲気もあり、本当にアットホームな現場でした。監督もすごく優しくて「みんな穏やか~」みたいな感じで。
私は普段作品に出演しても、共演者の皆さんとあまりしゃべらずに終わってしまうことが多いので、自分的にはすごく珍しいことなんです。みんなでめちゃくちゃ仲良くなって、いろいろな話をしました。その良さが作品にも出ているんじゃないかな、と思います。
――川栄さんのメイン回となる第2話は、幽霊となった佐々木咲が改めて自分の人生や我が子と向き合うようなお話でしたよね。
咲はちょっとぶっきらぼうだし、一見、子どもがいそうに見えない感じですよね。そんな彼女が「愛とは何だ?」とずっと言っているんですけど、それを子どもが教えてくれるようなストーリーになっています。最後は子どもが一番の味方と感じるようにもなっていて……自分が出ていながら言うのもなんですが、感動しましたし、素敵な台本だなと思いました。
――咲を演じるにあたって、特別意識したこともありましたか?
私、普段から事前にあまり役づくりをしないんです。衣装やヘアメイクで「今回演じるキャラクターはこういう感じなんだ」と思ったら、それでスイッチが入るタイプかもしれないです。今回の衣装は本当にボーイッシュですし、幽霊なのでほぼ1着なのもあって、気持ち的にはすごく入りやすかったかなと思います。
――いつもあえてつくりこんで臨まず、というスタンスなんですね。
そうですね。仕事が終わったら「はい、もうおしまい!」となるタイプなので、家にあまり持ち込まないんです(笑)。だからいい意味で言うと、作品を同時にやっても別に引っ張られないんですよね。それだけはちょっと強みかなと思います。切り替えはすっごく早いかもしれないです。
――お芝居をされる前、アイドル時代からそうだったんですか?
はい、そうです。アイドル時代はいかに臨機応変にやるかが大事で、例えば立ち位置が当日変更になったりもするので、いかに切り替えてやるかを学びました。
――切り替えが早い以外に、川栄さんの長所を挙げるならどんなところになりますか?
えー! ……台詞(覚え)もわりと早いほうかもしれません。「台詞がやばい!」みたいなことはそんなになかったかもしれないです。せっかちなので後回しにするのがすごい嫌なので、もらった瞬間に覚えたくて。ちょっとずつじゃなく全部覚えてしまうタイプです。
今回も台本になる前の仮の段階から紙でいただいたので、それで覚えました。いざ完成された台本をもらったら「全然台詞が違う」とかは結構あります(笑)。短時間でできるだけ覚えたい、となっちゃっています。
2023.08.28(月)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=KUMI/KUMI
スタイリング=有本祐輔/Yusuke Arimoto