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“鳳”の字に秘密あり! 京都の中華はガラパゴス!?

 京都に行くなら和食を予約。そうでなくても和をベースとした食事をしたくなるという人が多いかもしれない。

 では、現地で暮らす人たちはなにを食べているのかというと「お昼は町中華やね」「子どものころから集まりは中華の円卓」という声が聞こえてくる。

 それだけなら観光客が中華料理店に行く理由にはなりそうもない。京都旅で中華料理を推したいのは、この地ならではの中華料理があるからなのだ。

 例えば「からしそば」。練りがらしベースのタレを絡ませた中華麺に、鶏肉やエビ、野菜の餡がたっぷりとかかる、あえ麺。メニュー名は店によって異なるが、「撈麺」と書かれている場合が多い。まあ、どこでも「からしそば」で通じるのだが。優しい味の餡ときりりとした辛さを秘めた麺の組み合わせはどうにもクセになる。

 キーパーソンとなるのが伝説の中国料理人・高華吉氏。大正時代、京都初の中華料理店としてオープンした「支那料理ハマムラ」のコックとして働き始め、その後独立し、「飛雲」「第一樓」そして「鳳舞」を開業。これらのお店で修業を積んだ料理人たちのお店は「飛雲系」「鳳舞系」などと呼ばれ、「飛」「鳳」といった文字が店名に含まれていることが多い。

 「からしそば」はこれらのお店のメニューには必ずといっていいほど載っており、ほかにも、卵生地でサクサクの春巻きや、薄皮に包まれたクワイ入りで歯ごたえのいいしゅうまいなども、「飛雲系」「鳳舞系」では必食だ。

 これは大正時代、高氏が中国で使っていた食材が手に入らず、赤唐辛子の代わりに練りがらしを使ったり、春巻の皮を自家製にしたりしたことで誕生したといわれ、長年にわたりひっそりと文化として継承されてきたのだ。

2023.09.22(金)
文=大嶋律子(Giraffe)、CREA編集部
写真=ハリー中西、前田隆汎

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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