おとぎ話に出てきそうな絵になる風景

 喜界島には、まるで空想上の世界のような、絵になる風景があちこちにあります。

 たとえば手久津久(てくづく)のガジュマル。枝幅42メートル、幹回り16メートルのドスンとした大樹で、樹齢は100年を超えるとか。ガジュマロは家を囲む防風垣として使われ、枝は燃料に、枯れ葉は肥料として、島の暮らしに不可欠な存在だったそう。

 さとうきび畑の真ん中を走る、ひたすらまっすぐな道「さとうきび畑の一本道」。別名シュガーロード。気持ちいいくらい直線の道が約3キロも続きます。まるで北海道のようなスケール感です。

 さとうきび畑の真ん中にぽつんと立っている“魔女の木”も気になる存在。根っこに隆起サンゴの塊を抱えているガジュマルの木で、その周囲にソテツ、モンパノキなどの亜熱帯の植物が寄せ植えのように生えています。“魔女の木”というネーミングの理由は、島の人にもわからないそうですが、なにかスピリチュアルな“気”を感じます。

 もうひとつ、ネーミングが気になるスポットが「トトロの道」。サンゴを積み上げた石垣の間に、ほうき目をたてた白砂の道が走っています。あちこちで亜熱帯の植物が絡み合ってトンネル状になったところも。木々のトンネルを抜けて歩くのが、なんともワクワクします。ちなみに喜界島にはハブがいないので、石垣の周辺や草むらを歩いても安心です。

 ずんぐりむっくりした体形がキュートなトカラ馬のグラッシーちゃんと出会えるのは「グローリーファーム」。トカラ馬は日本在来馬で、喜界島とトカラ列島の宝島で飼育されてきた希少な種。“トカラ”馬というけれど、もともと喜界島在来の喜界馬が明治30(1897)年頃にトカラ列島の宝島へ移入したもの。30年ほど前に喜界馬が絶えてしまったため、宝島からやってきたグラッシーちゃんは、いわば逆輸入のような存在です。

2023.09.14(木)
文・撮影=古関千恵子