#276 Kuchinoerabu-jima
口永良部島(鹿児島県)

 およそ50万年前から、10個の火山が順々に誕生し、度重なる火山活動によって溶岩や火山灰などを噴出し、大きくなったという口永良部島。

 大小の2つの島が合体したような形で、最高地点が657メートル。と聞くと、低いように思えるけれど、水深600メートルの海底からそびえていると考えれば、全体像としては1200メートル。面積も南西諸島の火山島では、最大だとか。

 前回は、火山がもたらす恩恵のひとつ、温泉(かなりの秘湯!)をご紹介しましたが、今回は豊かな動植物についてのお話を。

 口永良部島は別名“緑の火山島”と呼ばれています。

 山頂付近はマルバサツキ、その周辺はスダジイやタブノキ、ホルトノキなどの照葉樹林、海岸部はハマビワやマルバニッケイなどの常緑低木林が広がっています。それ以外のほとんどはダイミョウチクの笹が占めています。

 森に入ると、珍しいランを見かけることも。ツルランの群落が6~7月には開花し、サクラランやコクラン、そして環境省により絶滅危惧種に指定されているムヨウランのタカツルラン、昨年口永良部島で新たに国内2番目の自生地が発見されたヤクシマヤツシロラン……。ランに詳しい方なら、訪れてみたくなることでしょう。

 ガイドをしてくれたえらぶ年寄り組の山口英昌さんたちは、森の中の一画をヤクシカが入らないように囲い、植物相の成長具合を調べています。植物たちの勢いの良さは、島の生命力そのものにも見えてきます。

2023.06.17(土)
文・撮影=古関千恵子