ひとはあるものだけで豊かになれる
火山灰由来の土壌は作物がよく育つといいます。口永良部島は、山の幸の宝庫。5~6月はダイミョウチクのタケノコのシーズン。タケノコ特有のアクがないので、そのまま天ぷらに。また、キウイの原種やブルーベリーの仲間のシャシャンボ、ぶどうのようなガネブなど、ワイルドなごちそうも実っています。
一方、海も豊穣。寝待・岩屋泊などにはサンゴ礁が広がり、サンゴは69種、魚種は546種とも、686種ともいわれています。魚種には黒潮にのってやってきたトロピカルな魚もいれば、新種が発見されることも。今回、私はダイビングをする機会がなかったのですが、ダイビングサービスもあります。
砂浜のある向江浜にはアカウミガメやアオウミガメが産卵のために上陸していたとか(現在は噴火後の土石流で地形が変わり、姿を見せなくなってしまったそう……)。西之湯温泉前の海ではアカウミガメを見かけることがあるとか。寝待温泉前の海でイルカの群れも見ました。
口永良部島では、ガイドに連れられて生物を見に行くというよりも、あるがままの彼らの暮らしを垣間見る、という感じでしょうか。
また、島の中心地の本村を歩いていると、あちこちに湧き水の分配タンクを見かけます。えてして島は水問題に悩まされるものですが、口永良部島では水が涸れたことはないそう。火山岩の層を通り抜けたシリカの濃度が高い地下水がこんこんと湧き、生活用水にも使われています。
水が豊かで、海の幸・山の幸に恵まれた口永良部島。「ひとはあるものだけで豊かになれる」というキャッチフレーズがしっくりきます。
が、問題もあります。戦後の農林省の植林政策で植えられた杉の人工林が放置されていることによる悪影響、増えすぎてしまったシカや野生化したヤギなどの被害……。人の手が入ったことによる、自然界のバランスの乱れだとは一概には言えないかもしれませんが、小さな島では影響が大きいもの。自然環境についても、考えさせられます。
口永良部島
●アクセス 屋久島へは鹿児島から飛行機で約35分、または高速船で約1時間50分から2時間45分。屋久島の宮之浦港からフェリーで約1時間40分。
●おすすめステイ先 民宿くちのえらぶ 電話番号 0997-49-2213
取材協力/えらぶ年寄り組 https://kuchinoerabu-jima-senior.org/index.html
Column
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2023.06.17(土)
文・撮影=古関千恵子