ひとはあるものだけで豊かになれる
火山灰由来の土壌は作物がよく育つといいます。口永良部島は、山の幸の宝庫。5~6月はダイミョウチクのタケノコのシーズン。タケノコ特有のアクがないので、そのまま天ぷらに。また、キウイの原種やブルーベリーの仲間のシャシャンボ、ぶどうのようなガネブなど、ワイルドなごちそうも実っています。
一方、海も豊穣。寝待・岩屋泊などにはサンゴ礁が広がり、サンゴは69種、魚種は546種とも、686種ともいわれています。魚種には黒潮にのってやってきたトロピカルな魚もいれば、新種が発見されることも。今回、私はダイビングをする機会がなかったのですが、ダイビングサービスもあります。
![北側の美浦の荒々しい磯場。タイドプールには様々な海の生き物が。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/5/1280wm/img_25c1da3b798b77c7737562934195cb2c159214.jpg)
![湯向地区にある民宿の夕食に並んだ、カメノテ。初めて食べました。美味!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/1280wm/img_049f1cdbf0ea48f29c745fc04461c580231519.jpg)
砂浜のある向江浜にはアカウミガメやアオウミガメが産卵のために上陸していたとか(現在は噴火後の土石流で地形が変わり、姿を見せなくなってしまったそう……)。西之湯温泉前の海ではアカウミガメを見かけることがあるとか。寝待温泉前の海でイルカの群れも見ました。
![明治半ばに熊本の僧侶によって発見され、日露戦争の頃に現在の温泉が作られたという西之湯温泉。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/1/1280wm/img_4138d14ce14972c91c5387ff38a3d067109422.jpg)
![寝待温泉の前の立神の海中温泉。ケガした魚も傷を癒しにやってくるとか⁉](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/4/1280wm/img_8491cd2f85ae9c852db84bbb1c0ad93f209622.jpg)
口永良部島では、ガイドに連れられて生物を見に行くというよりも、あるがままの彼らの暮らしを垣間見る、という感じでしょうか。
また、島の中心地の本村を歩いていると、あちこちに湧き水の分配タンクを見かけます。えてして島は水問題に悩まされるものですが、口永良部島では水が涸れたことはないそう。火山岩の層を通り抜けたシリカの濃度が高い地下水がこんこんと湧き、生活用水にも使われています。
![集落のあちこちに湧き水が。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/6/1280wm/img_862a948bc2762141fd7d9c8746bf54a1215557.jpg)
水が豊かで、海の幸・山の幸に恵まれた口永良部島。「ひとはあるものだけで豊かになれる」というキャッチフレーズがしっくりきます。
が、問題もあります。戦後の農林省の植林政策で植えられた杉の人工林が放置されていることによる悪影響、増えすぎてしまったシカや野生化したヤギなどの被害……。人の手が入ったことによる、自然界のバランスの乱れだとは一概には言えないかもしれませんが、小さな島では影響が大きいもの。自然環境についても、考えさせられます。
![山肌をびっしりと覆うダイミョウチク。春先は美味しいタケノコがとれるけれど、実は、荒れた土地で最初に勢力をのばすのがタケなのだとか。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/f/1280wm/img_0f0e189650ca3dd606b10b4c5ad44568185023.jpg)
![島の東部には広大な牧場が。同じ島でもいろんな表情があります。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/1280wm/img_49257cac7a78ca05cd76c223a5614fa641952.jpg)
口永良部島
●アクセス 屋久島へは鹿児島から飛行機で約35分、または高速船で約1時間50分から2時間45分。屋久島の宮之浦港からフェリーで約1時間40分。
●おすすめステイ先 民宿くちのえらぶ 電話番号 0997-49-2213
取材協力/えらぶ年寄り組 https://kuchinoerabu-jima-senior.org/index.html
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Column
古関千恵子の世界極楽ビーチ百景
一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!
2023.06.17(土)
文・撮影=古関千恵子