日本のどこよりも打楽器“ジャンベ”がポピュラーな島?
ところで、前々回の硫黄岳の登山をガイドしてくれた棚次理さんは、紫寿代さんのご主人。もともとはインスタレーションなどを手掛けるアーティストであり、島内の地質を説明するジオパークの看板のデザインをはじめ、島の暮らしにアートのスキルを活かしています。
そのひとつが、島に暮らす40名の子供たちが美術に触れるためのお手伝い。離島は美術の教員免許をもった先生が着任するのがなかなか難しいとか。そこで、美術の授業のお手伝いをしたり、子供たちが本物のアートに触れられる機会をと、現代美術の作家を招いて一緒に作品を作る機会を作ったり。
たとえば木の描き方でも、「ひとつの枝がふたつに分かれている」と、そのポイントを伝え、子供たちによく観察するように促すと、葉脈などを描き込むようになり、その先の発見につながったりするんだとか。子供たちはアートに触れることで、窓がひとつ開く体験をしている、と棚次さん。
また、薩摩硫黄島では日本のどこよりも、西アフリカの伝統的な打楽器“ジャンベ”がポピュラーです。フェリーみしまが入港する時は、子供たちが皆ジャンベを打ち鳴らして歓迎します。「日本の島でどうしてジャンベが?」と、不思議に思ったのですが、そこには理由がありました。
薩摩硫黄島でジャンベの人気に火が付いたのは1994年、ギニアの世界的なジャンベ奏者故ママディ・ケイタが来島したことがきっかけ。当時、初めて見る異国の太鼓に子供たちはびっくり。けれど陽気なリズムと、ママディいわく“楽しんで叩けばいい”ことがわかると、すっかり夢中に。
その後も毎夏、ママディは島を訪れて交流を深め、子供たちもギニアを訪問したこともあれば、ヨーロッパへ公演に行ったことも。島内にはアジア初のジャンベスクールが誕生し、ジャンベを学ぶ留学生も受け入れています。
小さな離島はアートに触れる機会が限られているかもしれないけれど、その分、受け入れてモノにする吸収力がハンパないのかもしれません。
ちなみに棚次理さんは薩摩硫黄島で現在使われていない建物、通称「旧出張所」を公共の展示空間にリノベーション中。完成後は、2023年10月13~31日開催の美術展「Oozing Point-滲み出る地点-」の会場のひとつとして使われる予定。
薩摩硫黄島ならではの現代アート作品、どんな展示になるか、楽しみです。
薩摩硫黄島(三島村、鹿児島県)
●アクセス 鹿児島港からフェリーみしまに乗り、約4時間。フェリーは朝9:30出港なので、東京から行く場合は前日泊が必要。
●おすすめステイ先 イオキャラバンパーク(素泊り)
https://io-caravan-park.site/
【取材協力】
株式会社いおう
三島村観光協会 http://mishimamura.com/gaiyoukankou/
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