
スタイリッシュなギャラリーやホテルが次々と誕生し、アートファンの視線を集めている群馬県・前橋。東京からすぐ、とは言えないが、電車を乗り継いでも出かける理由がある。ギャラリーが立ち並ぶ複合施設の中で、フランス料理をこよなく愛するふたりが立つ美しいレストランへ!
注目のアート街、前橋へフランス料理を食べに行く

群馬県の県庁所在地、前橋市。2020年12月に開業した、アートやデザインで注目を集める「SHIROIYA HOTEL」などがあり、デザインシティとして目が離せない。
そんななか、2023年に開業した複合施設「まえばしガレリア」は、「SHIROIYA HOTEL」と同じ“まちなかエリア”にある。1階には5つの個性的なギャラリーが並び、その中心にあるのが6月1日にオープンを迎えたレストラン「cepages(セパージュ)」だ。
フランス料理一筋に修業を重ねたシェフが前橋へ!

お店はベージュを基調とし、余計な情報量を排除した上品な空間。アート施設らしく、ところどころにある壁のアートがより印象的に映える。バーカウンターやダイニングスペースもあるが、当面は広々とフラットなカウンターでお任せ料理を楽しむことになるという。
カウンターごし、間近で腕を振るうのは、石橋和樹シェフ。その経歴は華々しく、調理師学校を卒業後、有楽町のグランメゾン「アピシウス」で料理人人生をスタートし、西麻布「レフェルヴェソンス」でセクションシェフを務めるなど華やかなキャリアの持ち主だ。
そんな石橋シェフが、シェフとして脂の乗り切った35歳で前橋へ。
「びっくりしましたが、面白い、という気持ちもありました。1年以上の準備期間があったので、東京で仕事をしながらさまざまな食材を取り寄せて試したり、休日には食べ歩きを。引っ越してきてからは生産者のもとを訪れています。素晴らしい食材や生産者との出会いが出会いを呼び、感謝する日々です」(石橋シェフ)
群馬の名物もフランス料理らしく登場

こちらは、「フランス料理なのだから、コースのスタートはキャビアとシャンパンで」という気持ちで作ったというタルタル。
まずはチョウザメがトップについた器が「お!」と思わせてくれる。HALキャビアは静岡県・浜松で、湧き水を使って作られているもの。「レフェルヴェソンス」時代から愛用している与那国島産の釜炊き塩を使って、特別に仕込んでもらっているオリジナルだ。刻むとねっとりと甘みが広がるアオリイカをタルタルに仕上げ、たっぷりのキャビアと。タイ料理で使われるコブミカンの香りが楽しい。

群馬で親しまれている名物といったら「焼きまんじゅう」。石橋シェフは、この素朴な郷土料理をレストランで提供できないかと、さまざまな焼きまんじゅうを食べ歩いて試行錯誤を重ねてきた。そして完成したのが、こちらだ。

独自の配合で作った生地を七輪でこんがり、ふんわりと焼き上げ、冷たい状態のフォアグラのテリーヌをのせ、ほんのりと溶けたところをいただく一品。高知県で作られているサトウキビの黒みつ「ボカ」を合わせた甘やかなご馳走には、極甘口の貴腐ワイン、ソーテルヌを合わせるのが最高だ。
料理の要となる「コンソメ」を堪能するスープ

石橋シェフが大切にしているものの一つが、コンソメ。あえて「だし」と呼ぶこともあるのは、まるで和食におけるかつおだしのようにクリアであっさりと、万能に使われているからだ。群馬県・榛東村「アクザワファーム」の上州地鶏をベースに、塩味は金華ハムからじんわりと広がる。

コンソメは土瓶で温められて器に注がれ、茶器のようにふたをする。トリュフもたっぷりと入っていて、食べる直前にふたを開けたときの香りはなんとも贅沢!
メインディッシュの潔さに胸打たれる

メインディッシュの鴨料理。昨今、なかなかお目にかかれないほどシンプルで、見事な深紅の火入れは、フランス料理の醍醐味。青森県・三戸の「銀の鴨」を炭火でじっくりと時間をかけ、しっとり焼き上げる。ソースは肉汁のほか、群馬で出合った十石味噌や黒ニンニク、フランス・バスクの香辛料「ピマンデスペレット」で作られ、しみじみと肉のおいしさが広がっていく。
シェフとの名コンビ、ソムリエによるペアリングも

ペアリングを担当するのはソムリエで、マネージャーを務める内藤大治朗さん。「レフェルヴェソンス」で石橋シェフと出会い、親交を深めてきた。シェフが群馬行きを決めたとき、まず声をかけたのが内藤さんだったというから、息の合ったサービスに身を委ねられる。

店内にはバースペースもあり、21:00から24:00はアラカルト料理とワインやシャンパンを楽しむことができるのも楽しみだ。
クラシックに敬意を払い、本物を味わえる。料理もアートも同じこと、と、教えてくれるフランス料理店の誕生。五感を磨きに、前橋を訪れてみませんか?
cepages(セパージュ)
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所在地 群馬県前橋市千代田町5-9-1 まえばしガレリア1F
電話番号 非公開
営業時間 18:00~20:30(L.O.) バーは21:00~24:00
定休日 水、月曜に2日不定休あり
料金 12皿前後のおまかせコース33,000円(サービス料込)
instagram @cepages_restaurant
※予約はInstagramのDMから
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2023.06.13(火)
文=CREA編集部