イメージと違うって言われるけど、突飛なことをしてる感覚はない

――これまでの台風クラブのイメージとぜんぜん違う曲ですよね。

石塚 でも、台風クラブを組んだ時点で、元々やっていた3コードのロックンロール~ガレージパンク的なものから離れてなんでもアリにするつもりだったから、俺らからするとそこまで突飛なことをしているって感覚はないんですよね。

――二曲目の「へきれき」は打って変わってギターポップ~ネオアコ色が強い曲ですね。けど、「そういうジャンルの音を再現してみました」っていう感じでもなくて、ちゃんと「台風クラブの曲」になっているのがいい。

石塚 まあ、単純にビチッと再現する演奏力がないってことかもしれへんけど(笑)。

山本 自分の演奏に関しても、この何年かで進歩したって感覚は一切ないです(笑)。

伊奈昌宏(以下伊奈) 石塚が持ってきた曲にあわせて技術を磨き上げるっていうより、自分のプレイの中に落とし込むって感じですね。

――それが自然と「バンドらしさ」に繋がっている?

石塚 そうかもしれません。だって、(山本に)今でも譜面とか読まれへんやろ?

山本 当然読めへんよ。カッコつけるとかじゃなくて、ホンマにわからない。だからって困ることもないしな。

石塚 俺もいまだにどういう押さえ方がどういうコードで、とか全然わかってへんからね。

――「旅情」や「とんがりブーツ」のように、マージービート風の曲も印象的です。

石塚 マージービートとかはそれこそ10代のころから好きなんですけど、だからといって3コードのロックンロールっぽいほうのマージービートサウンドをやるのは違うっていう意識があるんです。それよりも、もっと初期ビートルズとかのポップな曲に歌謡っぽい感覚が入っているようなのをやりたくて。

――なぜシンプルな3コードのロックンロールから離れたいという気持ちがそんなに強いんでしょう?

石塚 それはやっぱり、自分にはできなかったからっていうのがデカいと思います。好きなのに、っていうか、好きだからこそ難しかった。実際、未練タラタラなのは自覚してるんですよ。今でももちろんシンプルなロックンロールやガレージみたいのは大好きなんですけど、だからこそ、形だけロックンロールっぽいバンドとかみると、いかに上手く寄せてたとしても、「こんなんパチもんやん」って思ってまうんです。仮に俺らがそういうのをやったら、観客である別の俺は同じこと言うと思いますよ。「あんなバンドは偽モンや」って。だから俺らは、いわゆる「ロックンロールバンド」とは違うと思ってます。

伊奈 わかる。なんなんでしょうね、あの「ロックンロールっぽい」バンドへの違和感って……。

山本 もちろんホンマにカッコいい人らもおるけどね。細いスーツ着て「型」としてのロックンロールを好きでやりつづけるのは全然ええと思うんですけど、なんか……例えば暑いのにジャケット脱げへんとか(笑)、無理してる感じになるんやとしたらそれはどうなんかなと思いますね。その時々で好きな服着てステージ出てもええやんっていう(笑)。なんやろ、普段生きている感覚とバンドやるってことが離れているのは違う気がする。

2023.04.16(日)
文=柴崎祐二
写真=釜谷洋史