ロックの「型」に固執してたら、とっくに解散してたと思う(笑)
――台風クラブの音楽には、ロックンロールという「型」への愛着と、それへの反発が同居しているってことですかね?
石塚 そうなんかもしれないですね。ガチガチの「型」ありきでこのバンドやってたら4~5回は解散してたんちゃうかな(笑)。
――歌詞の面でも、1970~80年代の日本語ロックに通じるような「型」を思わせるようでいて、そこから逃れようとしている感じがします。
石塚 たしかにその時代の日本のロックはむちゃむちゃ好きなんですけど、だからといって「型」をなぞろうとかそういうのはないですね。にじみ出ているものはあるとは思うけど。今まで名前のついてなかった感覚を、この言葉とこの言葉をならべることでたぐり寄せる、というか。
あ、それで思い出したんですけど、こないだTHE FOOLSの映画(『THE FOOLS 愚か者たちの歌』)を観に行ったんですよ。
山本 観たんや! ヤバない!?
石塚 ヤバい。ホンマに食らった。
「自由が一番最高さ!」(「MR.FREEDOM」)とかって、俺の感覚からすると、考えうる中で最低の歌詞っていうか、絶対に書けへんのやけど、THE FOOLSの演奏で伊藤 耕が歌った瞬間に、もう最高に刺さるんですよ。思い切りストーンと腑に落ちる。あの説得力はヤバすぎる。
――歌詞って、ただ言葉としてあるわけじゃなくて、あくまで音楽と、歌う人間の肉体とともにあるものですからね。同じ言葉でもどうやって音楽と結びつくかで伝わり方が全く違ってくる。
山本 そうですよね。ああいう言葉は俺も絶対言えへんけど、伊藤 耕が歌うと違うんよなあ。
石塚 パワーっていうか、魔力。それこそ俺が諦めたロックンロールそのものが体現されてましたね。ああいうのみると、やっぱロックバンドってすごいわ、と。
――バンドって、続けていくために色々なコストがかかる形態だと思うんです。ライブするにしても重い機材を運ばなきゃいけないし、リハ代もかかるし、ツアーをやれば移動も大変だし。いっそラップトップPC一台で音楽をやったほうが楽だとも言えますよね。
石塚 ああ~。「一回ロックンロール諦めとるんならギターなんぞ捨ててどんな音楽でもやれや」って話ですよね? そういわれるとたしかに返す言葉がなくて……。
――いや、そんなつもりでは(笑)。
石塚 実際、打ち込みで曲を作ってみた時期もあったんですよ。とはいえ、やっぱり人が集まるところ、ライブハウスの中でバンドっていう形で音を出すっていうあり方が色々話が早いっていうか、伝わるものの質が違うと思うんですよ。演奏にしても、お客の反応にしても。生の演奏の「怖さ」というかね。
山本 俺は音楽を自分でやるってなったらバンドって形以外は最初からありえなかったですね。人とバンド組んで楽器をやるっていう形じゃなかったらやってなかったと思う。
伊奈 人が集まって音楽をやるっていう面白さってのいうはやっぱりバンドだけだよなって思いますね。みんながぶつかれば、それだけ予測してなかった面白いものが出てくるし。
2023.04.16(日)
文=柴崎祐二
写真=釜谷洋史