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大事にしているのは人と人とのマッチング

――地上波以外のプラットフォームが増えている中で後進育成にあたられているわけですが、マネジメントする上でその点はどう意識されていますか?

 どこでも言われている話ですが、地上波の視聴率が番組の一番の指標だったところから多角的に分析する状況に変わっています。だから視聴率だけでは測れないものをたくさん褒めるようになりました。人によって得意不得意がありますよね。SNSを使って番組を押し出すのが上手だったり、TVerなどの配信でよくみられる企画が得意だったり。そういうところをしっかり見つけてあげることは意識しています。その上でプロデューサーとディレクターをマッチングさせることは、今の自分の仕事の中でいちばん重きを置いているところです。「この子はこういうことが上手だけどまだ地上波では結果を出せていないから、地上波での戦い方を知っている編成出身のプロデューサーと組ませてみよう」とか。約1年やってきて、なんとなく回るようになってきた気がします。

――バラエティーの作られ方、企画の立てられ方は以前と比べてどう変わってきたと感じていますか?

 私たちは公共の電波で地上放送をやっているわけで、そこはもちろんいちばん大事にしてるところです。同時に、たとえば今だと新しく番組を作るときにWebを使って事業部と組んで何かイベントをやりましょう、みたいことも出てきます。「久保みねヒャダ」はその好例で、事業局と一緒にやっています。イベントを開催すると本当にすぐチケットが完売するし、オンラインチケットもすごく売れるんです。そういう番組の場合、地上波をPRとしてうまく使おうという考え方になる。それはいちばん大きく変わったところだと思います。当たり前ですけど、「視聴率5%」といっても、その先には何百万人もの視聴者の方がいらっしゃって、それってYouTubeの再生数に置き換えたらものすごい数字なわけじゃないですか。

――たしかに一桁台でも見ている人数は十分多いですし、求めて見に行くのではなくなんとなくで目に入る構造は強いです。

 だからこそ、今の20代、30代の子たちはどうやったら視聴者が立ち止まって見てくれるのか、ものすごく考えてつくっています。それこそNetflixで動画を見るのが当たり前の環境で育ってきた世代もいますし、私たちの頃よりももっともっといろんなものを観てきて情報もたくさん持ってる。それを活かして尖った企画をやりたいという人はすごく多い。あらためて、地上波で番組をつくってる仲間たちはすごいと思いますし、私も若い世代に負けないように頑張っていきたいと考えています。

北口富紀子(きたぐちふきこ)

1998年にフジテレビに入社。2年目からバラエティを制作する部署に所属し、数多くの人気バラエティ番組を手がけた。演芸班のチーフを務めたのち、現在は部長職企画担当としてフジテレビで作られるすべてのバラエティ番組に関わっている。

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Column

テレビマンって呼ばないで

配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

2023.04.21(金)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖