今、SNSで「茶餐廳(チャーチャンテン)」という言葉がひそかに話題になっています。これは、香港ではコンビニよりも多いと言われている、香港式のファミレスのようなお店のこと。日本には2015年にひっそりと上陸していたのですが、2022年に流行した“ガチ中華ブーム”が後押しとなり、近年注目を集めています。
日本風にアレンジされていない“本場香港の味”が楽しめると香港通の間で愛されてきた「茶餐廳」。今回は、本場の味とアットホームな雰囲気で舌も心も癒される、神奈川県横浜市鶴見区にある「Maggie's Kitchen -cafe&bar-(マギーズキッチン)」を訪問。お店の魅力と自慢料理の数々をご紹介していきましょう。
昭和の雰囲気残る町で味わえる本場香港の空気感と料理
都心から羽田空港や横浜をつないでいる京急線の生麦駅を降りて、徒歩約5分。昭和の雰囲気がどことなく残る街並みを歩いて、路地裏を曲がったところにひっそりと佇んでいるのが「マギーズキッチン」です。
お店のガラス窓に描かれたロゴには「美記茶餐廳」という文字が並んでおり、住宅街の一角にふいに本格的な香港の雰囲気が顔をのぞかせます。その一方で、軒先に立っているのぼりには「当店自慢の手作り焼きたてパン」という文字もあり、謎と興味が深まります……。
扉を開けると、柔和な笑顔が素敵な同店のオーナーである香港出身のマダム、浅賀マギーさんが出迎えてくれました。「茶餐廳」というだけでも日本では珍しいのに、さらにパン屋としての顔も持つ「マギーズキッチン」。
いったいどういった経緯で、ここ横浜でオープンすることになったのでしょうか。
「もともと香港に住んでいたのですが、1992年にアメリカから香港に駐在していた今の夫と知り合って結婚し、彼が故郷の日本に戻るときに私も来日しました。故郷の味を求めて日本で“香港料理”と銘打たれたお店にいくつか通ったのですが、どれも故郷の味とは程遠い“日本風アレンジ”がされたものばかり。これはもう自分で作ったほうが早いなと思って、茶餐廳を開くことを決めたのです」(浅賀マギーさん、以下同)
コーヒーショップの居抜き物件を改修して、2019年にオープンしたという「マギーズキッチン」。特徴的なパン屋の要素はどこからきたのかを尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「昔からスイーツ作りが趣味で、その延長でパンを作ることも多かったので、来日してからパン作りの資格を取り、スイーツと一緒に手作りパンもお店で出すようにしたのです。本場の茶餐廳で定番メニューとして親しまれている、香港式のメロンパンである『菠蘿包(ポーローパオ)』(210円)から、日本風のお惣菜パンまで日替わりで提供していますよ」
2023.04.22(土)
文=TND幽介(A4studio)
撮影=平松市聖