香港の冬といったら「煲仔菜(ボウジャイチョイ)」。土鍋でグツグツ煮えるおかずや、ごはんも入って丼のような料理をローカルレストランで楽しめる。ときには、ほぼ外にある店先の席で食べることもあるから、保温性の高い土鍋が欠かせないのだ。日本よりも温暖な香港の人も、寒い時期にはここぞとばかりに楽しむ庶民のご馳走。

 日本でも有数の名門広東料理店であり、ウェスティンホテル東京のシンボルでもある「龍天門」では3月いっぱい、この土鍋料理「煲仔菜」のフェアを開催。広い視野で広東料理をとらえる和栗邦彦料理長が提案する煲仔菜は8種類もあり、どれも今回誕生した新メニューばかりだ。今回はさっそく全品をご紹介!


◆牛バラ肉と大根の水炊き 潮州風

 澄んだスープに大きな牛肉と大根がゴロゴロ。スープは透明ながら、セロリなどの香味野菜の味も濃厚。そのだしが大根にしっかりとしみ込んで、まるで広東料理風のおでんだ。牛バラ肉はホロホロ、お肌にうれしい牛筋も入っていて、贅沢な味わい。

◆海老と春雨の上湯スープ煮込み

 中華料理の醍醐味はスープといわれるが、こちらの丁寧に丁寧に作られた上湯スープさすがの逸品。旨味に満ち、それが春雨にしみ込んで、ご馳走に。また、特大の海老が惜しげもなく入っているのもうれしくなる。隅から隅まで旨味が詰まっているようなひと品。

◆干し椎茸 竹の子 揚げ豆腐の醬油煮込み

 こっくりと醬油味に煮込んだ料理。揚げ豆腐は表面に味がしみ、中はとろけるよう。椎茸はこれまた特大で、アワビのような存在感を放つ。「煲仔菜はローカルフード。いわばおかずなので、ごはんと合わせていただくのもおすすめです」とスタッフ。これは合いそう!

◆白身魚のトウチ煮込み

 肉厚に切ったその時期の白身魚を、火を通しすぎず、ふんわりしっとり。黒豆を使った発酵調味料のトウチの奥深い塩けと、じっくり焼いた玉ネギが香ばしい。煲仔菜は必ず蓋がついているが、これは保温のためでもあるけれど、開けた瞬間に香りがふわっと立ち上るのも魅力のひとつ。

2023.02.21(火)
文=CREA編集部