この記事の連載

 日本は世界でも有数の“贈りもの大国”だと言います。

 目まぐるしく変貌を遂げた日本の100年、いつの世も、誰かが誰かに贈りもので気持ちを伝えてきました。“贈る人”に信頼され、“贈られる人”を喜ばせる。

 そしてこれからの100年もきっと、変わらず愛される、そんなブランドの物語です。


【since 1890】帝国ホテル

特別な日、100粒のいちごを使ったショートケーキを歴史の風景とともに

 1923(大正12)年9月1日。今から100年前のこの日、20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトが手掛けた帝国ホテルの2代目本館「ライト館」が開業した。奇しくも開業披露宴中に関東大震災に襲われ、周辺の建物の多くは倒壊、焼失した中、ライト館はほとんど無傷だったという。

 関東大震災で、ホテルは近隣住民への炊き出しはもちろん、結婚式が挙げられず困っている人たちのために、ホテル内に神社を設置。当時は神社や自宅での婚礼が一般的だったのだが、これにより、一つのホテル内で着付けから挙式、披露宴、記念撮影までを行う“日本のホテルウエディング”が誕生した。

 目の前にいるお客さまが何を求めているかを探り、それに応えていくことで、新しいサービスを生み出していく。そんな一流ホテルが紡ぎ続ける最高のおもてなしは、今もしっかりと受け継がれている。

 さて、手みやげの聖地・ホテルショップ「ガルガンチュワ」は、「帝国ホテルの味をご家庭で」をコンセプトに71年に開店。この年は、マクドナルド1号店が銀座にオープンしたり、安藤百福がカップヌードルを発売したり、新しい食の時代の幕開けでもあった。ハンバーグ、カレー、コロッケなどのデリカテッセン、ベーカリー(ちなみに、ホテルベーカリーは2022年で111周年!)で焼かれたパンや本格的なケーキが登場。

 74年には、面積が3倍に増え、当時の料理長・村上信夫氏がこれらの商品の監修を行った。コンソメスープ、冷凍食品のビーフストロガノフとシーフードグラタンも好評を博した。アイスクリームやマーガリン、ドレッシングなど、今も人気の商品が生まれたのもこの時代。商品のラインナップの変遷を見れば、どれも、その時代の最先端の味だったことがわかる。

 憧れのグルメショップとして、いつの時代も、お客さまに寄り添いながら、豊かな暮らしを演出してきた。

 21年、「ガルガンチュワ」は50周年を迎え、帝国ホテルプラザ 東京へ移転。第14代東京料理長の杉本雄氏が監修している。目的別の3ヵ所に分かれ、モダンな空間でのプレゼンテーションはとてもシック。入店するだけで高揚感に包まれる。

 ホテルはどんなお客さまの要望にも応える懐の深さが必要と、幅広いラインナップが特長だ。ブルーベリーパイなどの伝統の味を残しつつ、量り売りや1個売りといったスタイルも導入。食の未来を見据え、環境に配慮した商品も開発している。

 「お客さま一人ひとりのご要望にお応えするための“多様性”。すなわち、“誰一人取り残さない”という食のバリアフリーこそが、おいしく社会を変える取り組みだと考えています」と話す杉本料理長の言葉に、ホテルショップのこれからの在り方が見えるはずだ。

 「ライト館」は一部が愛知県犬山市の明治村に移築され、数年後には現本館も新しく生まれ変わる。

 伝統と革新を繰り返してきた日本最高峰のホテルの味は、さらなる進化を遂げることだろう。

帝国ホテル 東京「ガルガンチュワ」

所在地 東京都千代田区内幸町1-1-1帝国ホテルプラザ 東京 1F
電話番号 03-3539-8086(直通)
営業時間 10:00~19:00
定休日 無休
https://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/hotelshop/

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100年の贈りものストーリー

2023.02.04(土)
Text=Mika Kitamura
Photographs=Yosuke Suzuki(Erz),Atsushi Hashimoto
Styling=Tomoe Ito

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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