この記事の連載

 日本は世界でも有数の“贈りもの大国”だと言います。

 目まぐるしく変貌を遂げた日本の100年、いつの世も、誰かが誰かに贈りもので気持ちを伝えてきました。“贈る人”に信頼され、“贈られる人”を喜ばせる。

 そしてこれからの100年もきっと、変わらず愛される、そんなブランドの物語です。


【since 1902】資生堂パーラー

グラフィカルなのに心が温まる100年いつも先端の贈りもの

 東京・銀座8丁目。レンガ色の東京銀座資生堂ビルは、食と文化の情報発信基地として、2001年、スペインの建築家の設計によって落成。1階にある「資生堂パーラー」のショップは贈りものを求める大勢の人たちでいつも賑わっている。

 1902(明治35)年、今と同じ場所にあった「資生堂薬局」内の、ソーダ水とアイスクリームの製造販売を行う「ソーダファウンテン」が、「資生堂パーラー」の前身だ。主な顧客は、当時活気のあった新橋の芸者さんたち。ソーダ水1杯に化粧水「オイデルミン」1本を景品として付け、「喉の渇きを癒す飲料」と銘打って宣伝したこともあって大当たり。銀座の一大名物となった。

 その後、23(大正12)年、今から100年前の関東大震災で銀座は全焼し、薬局も全壊。そんな大被害の後、2カ月で営業を再開したことは、現在も語り草になっている。それも、パリ在住の画家・川島理一郎のデザインで。

 初代社長の福原信三が米国留学時代に川島と知り合い、後に川島は資生堂意匠部(宣伝部)に嘱託として所属した。バラックの仮店舗での再開だったが、白壁に紫色の窓枠の瀟洒な外観は、ヨーロッパの雰囲気を醸し出していた。

 たった2カ月での再生は、その後の快進撃を予想させるものだった。28(昭和3)年には西洋料理の草分けとなるレストランを開業。昭和初期には、今も人気の「花椿ビスケット」を製造販売。70年代には、フランス料理店「レストラン ロオジエ」、「バー ロオジエ」、「サロン・ド・カフェ」も誕生する。

 「資生堂パーラー」が今も手土産の聖地として愛されているのはなぜだろう。親会社の資生堂は、世界有数の化粧品メーカーで、その名前を聞けば、時代の空気感を伝える広告や雑誌「花椿」のビジュアルなど、さまざまな“上質な美”を思い浮かべることができる。このスピリッツは、「資生堂パーラー」のお菓子の味とパッケージデザインにも受け継がれてきている。

 先鋭的なデザインなのに、どこかほのぼのした空気感が漂い、しかも上質でリッチなイメージ。これにはグラフィックデザイナーの故・仲條正義が深く関わっている。

 90年、仲條はパッケージデザインの全面リニューアルを担当。当時、食品関係のパッケージにはブルーは使わないという常識を打ち破り、明るいブルー地にゴールドの組み合わせで、時代の先端をいくイメージを作り上げた。

 そして、2015年に行われた全面リニューアルも、再び仲條が担当した。テーマは「銀座アヴァンギャルド」。パッケージはレトロでありながらも革新され、モチーフを描いて一目で中味が想像できるわかりやすいデザインに。

 ハンディバッグは歴史あるブルーと黒、白の組み合わせで目に入った瞬間からインパクトを与え、包装紙は懐かしい雰囲気を醸しながら新しいスタイルの唐草文様。まさに歴史と未来を感じさせる。

 いつの世も「資生堂パーラー」のお菓子は、贈る側にも贈られる側にも弾む気持ちを与えてくれる。

資生堂パーラー 銀座本店ショップ

所在地 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル1F
電話番号 03-3572-2147
営業時間 11:00~20:30 ※変更の場合あり。HPで確認を
定休日 無休
https://parlour.shiseido.co.jp/

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今までも、これからも届けたい
100年の贈りものストーリー

2023.02.05(日)
Text=Mika Kitamura
Photographs=Yosuke Suzuki(Erz)

CREA 2023年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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