コロナ禍の影響により、海外へ自由に往来できなかった約2年半。残念ながら、この期間に多くの老舗が閉店してしまいました。しかし、去る者あれば、来たる者あり。過酷な状況の中でも、新たにオープンした素敵なお店がたくさんあります。
前回、皆さんにおすすめしたいレストランやメニューをご紹介しましたが、まだまだあります! 今回は、台湾らしさを詰め込んだ上質な創作料理店や、洗練されたバーなど4店をご紹介。ぜひチェックしてみてください。
台湾ならではの食材を使用した創作料理レストラン
◆好嶼 HoSu
2022年2月にオープンした創作料理レストラン。好嶼HoSuの「嶼」は、島嶼の「嶼」から取っていて、台湾諸島を表しています。
台湾には、台湾料理や客家料理、先住民料理などのさまざまなエスニック料理がありますが、好嶼ではそういったジャンルにとらわれず、それぞれの良さを活かし、さらに西洋料理などの技法も織り交ぜた、台湾の風土と個性を感じられるような創作コース料理を提供しています。
オーナー夫妻が台湾のあちらこちらに足を運び、生産者さんから直接話を聞いた上で、ご自身で良いと感じた食材を使用することを理念としています。
店の前には大きな木々などが茂り、閑静で隠れ家的な雰囲気。入り口前のテラスには大きな木製のテーブルセットがあるので、ここで食事を楽しむこともできます。
お店があるのは台北の東区。昔から流行の発信地といわれてきたファッションの中心地で、現在もおしゃれな若者たちの姿をよく見かけます。
また東区は話題の店が多いエリアで、好嶼の近隣にもファッションセレクトショップやカフェ、レストランなどが立ち並んでいます。
来店した日は秋だったこともあり、店内は秋色のシックで落ち着いたイメージでした。そして、料理のテーマは「原」。台湾の原、つまり平原をイメージした、実りの秋を感じられるメニューです。
シェフが厳選した食材を使い、お客様に楽しんでもらえるようにと考案した料理の数々。その一皿一皿から彼の思いが伝わってきます。
現在はコース料理のみの提供で、シーズンごとに内容が変わります。それではコース料理の一部をご紹介します。
好嶼HoSuのコースのメニュー
●冷河裡挽褲 Cold River(冷たい川でズボンをまくる)
鰻を青りんごと組み合わせた、さっぱりとした味わいの料理です。蕎麦せんべいとレンコンのパリパリとした食感が楽しめ、レンコンのほどよい酸味がいいアクセントになっています。
鰻がなぜテーマの平原なのかというと、台湾では海でも川でもなく、平原で鰻が養殖されているからとのこと。
●山風裡歌唱 Singing in the Mountain Breeze(山風の中で唄おう)
台湾のレストランではなかなか出会えない、サワー種を使用した本格的なハード系のパン。何もつけなくても、これだけでおいしい。
豆腐乳バターは、ほどよい塩気があってクリーミーな味わいです。
●茅屋裡的炊煙 The smoke in the thatched hut(わらぶき屋根の家からごはんを作る煙)
炭火で焼いた季節の山菜3~4種は、スモーキーな風味とほどよい塩味が素材の味わいを引き立てています。
豆腐は台東産の大豆を使用した自家製のもの。台湾の豆腐に使用されている大豆のほとんどが輸入品ですが、台東産の大豆にこだわって作られた豆腐はおいしく、滋味深い味わいです。
この山菜と豆腐によく合うのが、鮮やかなローゼルのほんのりと酸味の効いたソース。皿に散らした油芒は、日本語だと台湾アブラススキ。先住民がお米代わりに食べていたといわれる雑穀で、非常に栄養価が高い台湾ならではの食材です。
●早安你這孩子 Morning, my boy(おはよう、息子よ)
香ばしくローストされたウズラの肉は柔らかく、添えられたえのきの食感と、青唐辛子のソースが絶妙です。
この料理は、シェフが昔食べていた朝食からヒントを得て生まれたそうです。
●靄綠裡的魚兒 Fish in dawn Green(浅緑の中で泳ぐ魚)
マーブルゴビー(筍殻魚)は今台湾で養殖に力を入れている魚で、ダムで養殖されているそうです。本来は川魚ですが、臭みがなく淡白で、とろけるようにクリーミーな食感。巨峰のフルーティーな香りと、オクラのソースの淡く美しいグリーンが楽しめる一皿です。
トッピングのパリパリとした食感と濃厚な海苔の風味が、いいアクセントになっています。
●蘭陽平原的彩霞 Twilight from Lanyang Plain(蘭陽平原の夕暮れ)
大根餅とわかめのソース、チキンのスープがセットになった料理。運ばれてきた瞬間に白海老の香ばしい香りが漂い、食欲をそそります。
スープには生薬の山トウキが使用されていますが、漢方臭さなどはあまり感じないので飲みやすい。大根餅にスープを注いでいただきます。
●樹叢中的鵝 Goose in the Bush(茂みの中のガチョウ)
メイン料理はガチョウです。ガチョウ肉は脂肪分が少なく、ヘルシーな肉として台湾で人気。肉質は柔らかく、皮目がパリッと焼かれています。
茼蒿は台湾の春菊で、日本の春菊のような独特の香りや苦みはそれほどありません。
ソースにはクコの実が使われていて、薬膳の風味を感じられる一皿です。
コース料金はメインの素材によって料金が変わり、ガチョウの代わりにビーフを選ぶと2,680元(+サービス料10%)、ダックの場合だと2,380元(+サービス料10%)です。
通常はコースのみですが、金・土曜日は14:30から夜の営業時間までカフェタイムとなり、スイーツなどを提供しています。
また、夜の時間帯も予約をせずに来店した場合は、1,100元(+サービス料10%)で季節のスープ、天然酵母パン、サラダ、麻油鶏リゾットまたはビーフラグーのイタリアンパスタ、コーヒーまたは紅茶、デザートのセットメニューをオーダーできるとのこと。こちらもまた、おいしそうです。
先住民がかつて米の代わりに食べていたという雑穀や、漢方に使用されている生薬をソースに使用するなど、なかなか味わうことのできない食材や料理の数々は特別感があり、記憶に残る体験になるはず。
シェフの奥様であるMIKIさんがホールを担当していて、台湾人ですが日本語もできるので、言葉の心配がないのがうれしいですよね。
好嶼HoSu
所在地 台北市大安區忠孝東路四段181巷40弄14號
電話番号 02-2711-4723
営業時間 水・木曜 18:00~22:00、金・土曜 14:30~22:00
定休日 日~火曜
アクセス MRT忠孝敦化駅7番出口より徒歩約5分
2023.02.01(水)
文・撮影=矢作晃之