食事も本格派な大人の隠れ家バー
◆Bar Pine 松
![家具の専門店が軒を連ねる文昌路に店舗があります。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/e/1280wm/img_de29734aae80ba465d8b2066aaca1b6b127225.jpg)
ひっそりとした場所に佇む、落ち着いた雰囲気のバー。お店の外観も非常にシンプルで目立つ看板などはなく、壁に備え付けられた「松PINE」というシンプルなロゴが目印です。
![台湾でおしゃれな店舗の内装を多く手掛けている「隱室設計」が、お店のデザインを担当。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/e/1280wm/img_3e9d59ba7897595530af79f34c7f2d6791077.jpg)
洗練された空間には随所に盆栽が飾られ、木の温もりを感じる「和」テイストの雰囲気が心地いい。大人の隠れ家という言葉がぴったりのお店です。
![若い実力派バーテンダーのアリエルさん(日本語は少し話せます)。台湾らしさを表現した独創的なオリジナルカクテルを考案しています。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/1280wm/img_f64840deb9ad41fd88703062df7d578d123809.jpg)
![店内にはカウンターとテーブル席、入り口横に個室があります。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1280wm/img_7ed1b5e5eb5eefd927c5c5df53bf17ae83894.jpg)
お店は2022年9月末にオープンしたばかり。元々ここは、アーティストやデザイナーたちが集うクリエイティブな場所だったそうです。
店名の「松」は、以前この場所が木材店だったこと、お酒造りに使われる木の樽、そしてバーテンダーたちの歳寒松柏の職人精神などから、その名がつけられたそうです。
Bar Pine松の素晴らしいところは、お酒だけではなく本格的な料理も味わえるところ。日本の場合、バーは軽く何かをつまみながらお酒を楽しむ場所という印象がありますが、台湾のバーは食事もしっかりと楽しめるところが多く、Bar Pine松も食事メニューに力を注いでいます。
![オーナーの一人であるフォンさんのセンスが生きた食事メニュー。フォンさんは元々フォトグラファーで、現在はキューレターをしたり、マーケティング会社を経営しています。フォンさんは日本語OKです。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/6/1280wm/img_e67573beb6f3983354587a0022e0ee0c120233.jpg)
カクテルや料理メニューはシーズンごとにテーマがあるのですが、この日訪れたときのテーマは「菜市場」。菜市場とは台湾の朝の風景でもおなじみの伝統市場のことで、野菜、肉、魚、惣菜をはじめとする食料品や、日用品などがずらりと並びます。
その市場をイメージしたメニューの数々をご紹介します。ではカクテルのメニューから。
Bar Pine松の菜市場をテーマにしたカクテルメニュー
●紅心芭樂(ピンクグァバ)+山葵(わさび)+佛手柑(ベルガモット)
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わさび入りのウォッカをベースにしたカクテルで、ピンクグァバソーダのほどよい酸味、ベルガモットの爽やかな柑橘系の香りが楽しめます。
ちょうどいい甘さとフルーティーな味わいで、わさびの風味はそれほど強くはありません。ついグビグビ飲んでしまいそうなカクテルです。
●野生山苦瓜(ゴーヤ)+肖楠木+梅子(干し梅)+柚香金萱(柚香金萱茶)
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複雑な味わいが見事に調和したカクテル。清酒をベースに、ふんわりと優しい柚香金萱茶の香りをつけたスパークリングウォーターと、ヒノキ科の植物・肖楠木と干し梅をお酒に漬けた自家製のリキュールを使うことで、ウッディな香りとさまざまな素材の風味が感じられます。
野生山苦瓜は少し苦みが強めのミニサイズのゴーヤのことで、ほんのり感じる青くささがフレッシュな一杯です。
●菱角(菱の実)+香蘭葉(パンダンリーフ)+乳香黃連木(マスティクス)
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アーティストの陳漢聲氏とコラボレーションしたスペシャルシグネチャーの限定カクテル。
「デザートのように、最初はスプーンで泡をすくって食べてみて」とのこと。口に運んでみると、泡のふわふわ感と菱角のナッツのような風味が感じられます。
菱角(リンジャオ)は市場や屋台トラックでよく見かける食材で、ピーナッツとともによく売られています。真っ黒な固い殻が不思議な形をしていて、栗のように殻をむいて中の実を食べるのですが、あっさりとしたナッツや栗のような味わいです。
ドリンク部分はパンダンリーフやマスティクス、スキノスのハーブ感のある香りがあり、アジアらしいエキゾチックなカクテルに仕上がっています。
続いて、料理メニューをご紹介します。
Bar Pine松の菜市場をテーマにした食事メニュー
●松式烏龍梅子炸雞/280元
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日本の唐揚げを思わせる、ふっくらジューシーな炸雞(フライドチキン)。肉は柔らかく外はカリッ! 烏龍茶と梅を合わせた特製ソースでいただきます。
台湾の屋台では唐揚げに梅の粉を合わせることが多いのですが、揚げ物と爽やかで酸味のある梅の組み合わせは、日本人にとっても親しみやすい味ではないでしょうか。お酒が進む一品です。
●鹹豬肉卡布納拉燉飯/350元
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鹹豬肉は塩とスパイスに漬け込んだ豚バラ肉を、こんがりと焼いた客家料理。菜市場ではブロックのままドカンッと売られているのをよく目にする定番の総菜です。
松では豚肉を煮込んだ後にこんがりと焼き色をつけているので、肉の旨みがしっかりと残り、柔らかな食感です。
卡布納拉燉飯とはカルボナーラリゾットのこと。チーズが効いた濃厚でまろやかな味わいと、鹹豬肉の組み合わせは期待を裏切らないおいしさです。
●松 湯一品/180元(1人分)、350元(3人分)
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飲んだ後に〆でラーメンを食べるような文化は台湾にはないのですが、お店から「ぜひ〆に」とおすすめいただき食べてみて、思わず唸ってしまったのがこちらのメニュー。
台湾の伝統的な宴会料理「酒家菜」の定番スープ「魷魚螺肉蒜」を再現したスープで、名前の魷魚はスルメイカ、螺肉は台湾エスカルゴ、蒜はにんにくのこと。これに豚肉やしいたけが入った、素材の出汁が効いた旨みたっぷりスープです。特にスルメイカの香りが後を引きます。
屋台などではあまり目にすることがありませんが、本来はお酒の席に合わせて作られたスープです。これをメニューに採用するところが粋ですね。ぜひとも最後はこのスープを飲んでみてください。
お酒が好きで、台湾らしさを楽しみたいという方に絶対行ってほしいお店です。店内の雰囲気や味のセンスは抜群。行ってほしいと言いながらも、本当はちょっと教えたくない、とっておきのお店です。
現在のテーマである菜市場は3月頃までとのことなので、これらのメニューを味わいたいという方はお早めに。ミニマムチャージは日~木曜が400元、金・土日が800元、ともにプラスサービス料10%です。
Bar Pine松
所在地 台北市大安區文昌街138號
電話番号 02-2703-1380
営業時間 日~木曜 19:00~1:00、金・土曜 19:00~2:00
定休日 火曜
アクセス MRT信義安和駅3番出口より徒歩約1分
2023.02.01(水)
文・撮影=矢作晃之