大前粟生の原作小説を映画化した『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が描くのは、ぬいぐるみとしゃべるサークル、略して「ぬいサー」に属する大学生たち。ぬいサーに所属する学生たちはそれぞれに生きづらさを抱えながら、それぞれの今を生きている。
主人公である七森(細田佳央太)とともにぬいサーに入りながら、ある出来事をきっかけに、外に出ることに恐れを抱き、家から出られなくなってしまった麦戸を演じるのが駒井 蓮だ。2021年に公開された映画『いとみち』では主人公・いと役を演じ、数々の賞を受賞するなど、その繊細な演技は注目を集めている。ドラマや映画に活躍する彼女に話を聞いた。
台本を読んで「私、メッチャ麦戸ちゃんだ!」って思いました
――『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』はすごくやさしくて、繊細な物語だったと思います。その中でも駒井さんの演じる麦戸はナイーヴな役柄だったかと思いますが、最初に麦戸に出会ったときの印象はどういうものでしたか。
台本をもらった直後は、読んで「私、メッチャ麦戸ちゃんだ!」って思いました。麦戸ちゃんは一つひとつの出来事や言葉にすごく繊細に感じてしまう部分がある子で。そのせいで感じすぎてしまい、外の世界や他の人間を恐れてしまうこともあるのですが、そのナイーヴな部分が凄く理解できて。「そうだよ、わかるよ」って台本を噛みしめるように読みました。
――そういう意味では役作りの部分ではすんなり麦戸の役には入っていけた?
そうですね。
ただ、麦戸ちゃんだったらどう思うだろう、というのは常に意識するようにしていました。麦戸ちゃんは繊細であると同時に、すごく純粋な子。社会の汚れた部分を見ればひどくショックを受けるし、楽しい出来事があればこれ以上なくワクワクできる、素直な心の持ち主。麦戸ちゃんの視点から見ると、この出来事はどういう風に映るんだろうと考えていました。
後、ぬいサーはサークルなので、何人も部員がいるじゃないですか。その一人ひとりに対してはどう振る舞うんだろう、投げかけられた言葉にどう反応するんだろうというのをいつも意識しましたね。
2023.04.13(木)
文=CREA編集部
写真=平松市聖
ヘアメイク=里吉かなで
スタイリスト=尹 美希