なかなか手厳しいが、45年も続けてこられたからこそ、いろいろ感じるものがあるのだろう。それはそうと、「北国」という名前にしたのは富山生まれだから?

「つける名前がなかったからですよ。『北陸』にしようとしたら、看板屋さんから『北陸は誰も知らないからやめたほうがいい』っていわれたんですよ。あの当時はね。それで、向こうへ行くと北國銀行とかあるから、『北国(ほっこく)』とつけたんですよね。それが『きたぐに』と呼ばれるようになって、ならもう『きたぐに』でいいですよって」

 

みそラーメンは昭和の香り

 アバウトさがまたいいが、そんな話を聞いていたら、なんだかみそラーメンが食べたくなってきた。寒い季節には、寒い場所には、やっぱりみそが恋しくなる。

「(開店した)あの時代は、札幌ラーメン、大流行りだよ。どさん子、どさん娘、ピリカとか」

 ほどなくお目見えしたみそラーメンには、チャーシュー、メンマ、もやし、にんじん、ひき肉の炒め、ワカメ、カイワレがさりげなく並んでおり、ヴィジュアルからして昭和の時代を思い出させる。

「やっぱり、みそラーメンにはこれでしょ」と思わずにはいられない中太の縮れ麺は、スープにほどよく絡みつく。そのスープは濃厚でありながら、すっきりとした印象も。塩分過剰ないまどきのラーメンとは異なる、いかにもクラシックなスタイルのみそラーメンだ。

 こういうものをいただくと、この地で長く営業してこられたことにも強く納得できる。時代の波に左右されず、やるべきことを誠実に続けてきたからこそ、多くの人に支持されているのだろう。その証拠に一定のペースでポツリポツリとお客さんが入ってくるし、若い人からお婆さんまで年齢層も幅広い。

 ところが、横川さんはこうおっしゃるのだ。

「この年になるとね、めんどくさいんですよ。つくるのが。自分だけしかいないから。子どもは2人いるけど、やらないっていうし。疲れるから、こういう商売。それに、もう孫が大学生ですよ」

2023.01.27(金)
文=印南敦史