中央線沿線の旅、この日は西荻窪に来てみた。学生時代の地元なので、西荻窪というよりも、愛称の西荻(ニシオギ)で呼ぶ方が自然だ。

 西荻は、土日は快速が通過する駅。近隣の中野、阿佐ヶ谷、荻窪、吉祥寺などと比べると、大規模商業施設も交差する幹線道路もなく、狭いバス通り沿いに商店が並ぶやや地味な街だ。駅から少し離れると静かな住宅街が広がっている。商店街の中や裏通りに、老舗の洋菓子屋さんやおいしいと評判のパン屋さん、アンティークが充実した雑貨屋さん、裏通りのカフェや特徴ある古本屋さんも多く、町歩きが楽しい。

西荻駅前の商店街。なにげない店構えに「これは!」というお店を発見する楽しみもある
文学の棚、正面を向いているオススメ本に、小川洋子さんの『いつも彼らはどこかに』、山内マリコさんの『ここは退屈迎えに来て』(前々回登場、神矢真由美さんのオススメ本)を見つけて、少しうれしい

 今野書店は、そんな西荻の商店街、駅からすぐの、緑の看板が目をひく本屋さんだ。敷居が低く入りやすい入り口、暖かい照明、整頓された店内、わかりやすい陳列、いい本屋さんだ。

 最近、地下にコミックスやラノベのフロアをオープンしたが、街の本屋さんらしく、雑誌や児童書、実用書も文庫もバランスよく整っている。中でも、文芸や人文系の単行本の棚は充実しており、人文、文芸書担当の水越麻由子さんは、「特別な工夫をしているわけではない」というが、話題の新刊書を欠かさず揃えているし、オススメ本は見やすい高さに表紙を向けて陳列していて、限られたスペースを最大限活かした迫力がある。

駅北口から徒歩1分の今野書店。創業40年になる老舗だが、2年前にこの場所に移転した、明るく気持ちのいい店構え

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2013.11.16(土)