広里 料理によって人物に厚みを持たせたいという思いが、常にあります。やっぱり朝ドラって、独特ですよね。毎日、半年間観られるものだから、できる限りリアリティにはこだわりたい。視聴者の皆さんにとって朝ドラは生活の一部だと思いますし、登場人物にとって「食事」は日常のひとコマ。だから、食べたり作ったりするシーンで悪目立ちしない、「誰が見ても一目でわかる料理」を目指しています。「これ何だろう」「いったい何を作ってるんだ?」って一時停止しないとわからないような料理は、できるだけ避けたいですね。

――『舞いあがれ!』の現場の雰囲気はいかがですか。

広里 すごく仲がいいんですよ。毎作品のことなんですが、スタッフ・俳優さんも含めて、家族みたいな感じ。それに、舞ちゃんの笑顔を見ていたらもう、母親の気分になってきますよね(笑)。シーンに影響のない範囲で、「今日は寒いから、お味噌汁にちょっと多めに生姜を入れようかな」とか、「外食ばかりが続いているかもしれないから、野菜がたっぷり入った具沢山のお味噌汁にしよう」とか。そういったことを、ついつい考えてしまいます。

 祥子さんのハンバーグソースもそうでしたが、俳優さんの動きや仕草に、いつも刺激を受けています。ヒロイン役の福原遥さんは、本当に「気遣いの人」ですね。あんなに毎日撮影が大変なのに、共演者の皆さんにはもちろんのこと、私たちスタッフにまで気を配ってくださる。こちらも全力で応援したい気持ちになります。「この子を倒れさせてはいけない」「なんとかクランクアップまで元気に過ごしてもらいたい」という一心で料理を作っています(笑)。そういう、「良い影響」が循環する現場だと思いますね。

「時には、まずそうな料理も必要なんです」 「朝ドラの食卓」指導者が語る、『舞いあがれ!』『カムカム』制作秘話 へ続く

2022.12.20(火)
文=佐野 華英