広里 美術スタッフさんと話し合って、連携して作っています。祥子さんが軒先にぶら下げた干し網の中で作っている、魚の干物、干し野菜やかんころもちは、全部私が準備しています。ジャムを作るときにビワの皮や種が出るので、それを焼酎漬けにして台所に置いたりして。気づかれそうもないんですけど(笑)。でも、それでいいんです。その焼酎漬けの瓶に貼ったシールの日付を、祥子さんが舞ちゃんと一緒にジャムを作った日付にしました。ドラマの中では映らないだろうけれど、俳優さんたちがこういうものを見てほっこりしてくれたり、ほんの少しでも演技の役に立てたらいいなと願って。
――祥子ばんばとめぐみさんが作るそれぞれの料理に、性格や暮らしぶり、ひいては生き様まで表れていますね。
広里 祥子さんは生まれも育ちも五島。住んでいる地域には、おそらくコンビニもないし、スーパーも近い場所にはないだろうと思うんですね。だから自分で畑をやり、保存食を作りながら、上手に工夫して生活している。船大工の豪さん(哀川翔)や一太くん(若林元太)など、ご近所さんから魚をもらったりもします。祥子さんの食卓に上る常備菜や魚料理を、五島の郷土料理から引っ張ってこようというのは、あらかじめ決めていました。
一方、東大阪のめぐみさんは、家業と家事で忙しい人ですから、常備菜はあまり作らない。パパッと作れるメニューが多いです。かつては子どもたちが好きなお肉や揚げ物、グラタンなどの洋食がよく食卓に並びましたが、舞ちゃんと悠人くん(横山裕)が大きくなってからは、浩太さん(高橋克典)と夫婦2人の食事が増えたので、魚をよく食べるように。40代になるとだんだん、毎日お肉や揚げ物だと辛くなってきますから(笑)。めぐみさんが祥子さんと和解して、やりとりが増えたのも、魚料理が増えた一因かなと。
ヒロイン役・福原遥は「気遣いの人」
――まるで、プロファイリングのような作業ですね。
2022.12.20(火)
文=佐野 華英