大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK 脚本:三谷幸喜)で源実朝を演じている柿澤勇人の注目度が回を追うごとに高まっている。柿澤勇人とはどんな俳優か。

 ざっくり言うと、柿澤勇人の演技の主成分は、伝統芸能と劇団四季とミュージカルと蜷川幸雄と三谷幸喜でできていると考えることができる。つまり演劇のあらゆる要素をもったハイブリッドな俳優なのである。

 その理由を解説する前にまずは『鎌倉殿~』における源実朝についておさらいしておこう。

柿澤勇人が演じる「最大のミステリー」源実朝とは

 源実朝は鎌倉幕府、最大のミステリーと言われている事件の中心人物で、かの太宰治も『右大臣実朝』を書いているほどの魅力的な人物である。

 源頼朝(大泉洋)と政子(小池栄子)の子供で頼家(金子大地)の後を継いで3代目・鎌倉殿になったものの政治よりも短歌を好む、物腰柔らかな人物。穏やか過ぎて鎌倉殿としてはいささか頼りないと思われている。彼なりに鎌倉のことを考えて宋へ行く船を作るが大失敗してしまう。

『鎌倉殿~』での実朝は、女性を愛することができないため跡継ぎを望めない。自身の性的志向について人知れず悩んできた実朝を、柿澤勇人が陰影ある表情で演じている。それが三谷幸喜のイメージする実朝像なのであろう。

 10月7日放送の情報番組『あさイチ』(NHK)に柿澤がゲスト出演したとき、三谷は彼の「天真爛漫でちょっとさみしげ」なところが実朝に合っていると考えたという話があった。確かに独特の憂いを感じる顔立ちをしている。でも最近の実朝はいざとなればキッと顔筋に力を入れ若き将軍として強い気持ちを持っていることが伝わってくる。

三谷幸喜は「ディカプリオ」と柿澤を並べて…

 柿澤が三谷に見い出され、舞台『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』(19年)(※1)の主演に抜擢されたたきっかけも、柿澤の天真爛漫そうで闇を抱えてるように見える面だった。

 

 以前筆者が「プラスアクト」2020年4月号で柿澤にインタビューしたときに聞いた話によれば、柿澤の演じた『メリー・ポピンズ』(18年)の煙突掃除夫バートを見たときに三谷は自身のシャーロック・ホームズとリンクしたと感じたと柿崎に話したそうだ。

2022.11.27(日)
文=木俣 冬