人の“車”に乗せてもらって、後部座席でワーワー騒ぐ

――青木さんがこの11年で積み重ねてきたものが作り手に信頼されて、良質な作品に呼ばれるのだと思います。

 僕は他の人に個性を見出してもらったというか……。選んでいただいた場所が自分の身になる空間だったことが多く、巡り合わせやご縁の強さを感じます。毎現場違うチームなのに、知っているスタッフさんと会うことが最近多いんです。直接的なのかはわからないですが、一番近くにいる人たちとの関係を築くことが次のお仕事に繋がっている気もします。ここ1年くらい、すべてのことが奇跡的なタイミングでばっちりはまっているのかも。

――やはり何かが変わってきているという実感がある。

 自分が囲まれている人たちの魅力が半端ないというか、こんな方々と一緒にお芝居できて本当に有意義だなと感じています。一つひとつの現場を自分が成長するためのステップと捉えるのはあまり誠実じゃないなとは思いつつ、この1年はあまりにも素敵な出逢いが多いんです。「カムカムエヴリバディ」でも素晴らしい家族(川栄李奈、深津絵里、オダギリジョー)とお芝居ができました。ものすごく濃厚な、後々思い返すことが多い1年なのかなと思います。

――青木さんが「ここが勝負どころだ!」とアクセルを踏み込んだ瞬間はありました?

 アクセルを踏み込むどころか、僕はまだお芝居は無免許状態だと思います。人の車(作品)に乗せてもらって、後部座席でワーワー騒いで、ドライブを盛り上げる担当(笑)。

――いろいろな車に乗る権利を、今まではオーディションで掴んできましたが、オファーも増えていますよね?

 そうですね。ほとんどの仕事がオーディションありきだったので、お声をかけていただけるとありがたいし責任を感じます。その期待を裏切らないためにも、それこそアクセルを踏む、じゃないですが、オーディションのときとは違うものを軸としてちゃんと持っておく意識がないとダメだなとは思うようになりました。

――2022年はそれまでの努力が実を結んだ年という感覚ですか?

 (努力は)現在進行形ですが、たしかに以前の方が悩んでいましたし、いろいろと考えていました。当時の自分は苦しかったですが、苦しさの種類みたいなものはちょっとずつ変わってきていて、これからもずっと苦しんで、悩んでいくんだろうなと思います。

 ただ、壁にぶち当たったり落ち込んだりすることを、あまりネガティブなこととして捉えないようにはしています。そこに蓋をして無理やり自分をポジティブに持っていってしまうと、楽になる瞬間はあったとしても、自分をごまかして終わってしまうような気がするんです。落ちる時はとことん落ちる。その時はその時。ネガティブも含めていろんな自分がいますよ、みたいな考え方でずっとやってきたつもりです。

――悩みのタネはお芝居ですか?

 そうですね。「お芝居って何なんだろう?」と。技量や技術のあるプロの俳優を目指すのではなくて、どうやったら増えていく責任のなか新鮮でいられるのかな……みたいな矛盾を抱えたフェーズにいるなと最近ものすごく思います。

2022.12.03(土)
文=須永貴子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=小笠原吉恵(CEKAI)
ヘアメイク=嵯峨千陽