21歳の注目俳優・青木柚がクリエイターや観客から“信頼”される理由

 Amazon Primeで9月に配信されたオリジナルドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』(以下、『モアザンワーズ』)で、マッキーこと槙雄を演じた青木柚さんの瑞々しい演技に圧倒された。京都を舞台に、若者4人の10年間を描くこのドラマで、彼は青春の始まりと終わりをその存在で体現している。

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の桃太郎、映画『MINAMATA-ミナマタ-』でジョニー・デップが演じるユージン・スミスと交流する水俣病の少年、オムニバス映画『スパゲティ・コードラブ』のおしゃべりな男子高校生など、着実にキャリアを築いてきた青木さんは、現在主演映画『はだかのゆめ』が劇場公開中。闘病中の母の死を受け入れられず、徘徊する青年ノロ役として不思議な存在感を放っている。

 2023年には、『神回』『まなみ100%』という2本の主演映画が公開される。注目の若手俳優にインタビューを試みると、彼が多くのクリエイターや観客から“信頼”される理由が浮かび上がってきた。

総合芸術といえる作品に巡り合えることに幸せを感じる

――『はだかのゆめ』は、脚本がないのではないかと思うほど台詞が少なく、光と闇、そして空白と音で紡がれた映像詩でした。青木さんから見て、この脚本はどのようなものでしたか?

 今までいろいろな脚本を読ませていただいた中で、初めての感覚になった脚本でした。台詞やト書きの言葉の選び方があまり聞き馴染みのないものばかりで、いわゆる脚本というよりも、甫木元(空)監督の脳内にあるいろいろな要素や思考が詰まっているものだなと感じました。お話自体がすごく魅力的で惹きつけられるものがありましたが、演じる側としては役の人物像に関して掴みきれない部分が多々ありました。

 その後、衣装合わせで監督とお話をする機会があって、わからない部分を質問させていただきました。そこで得られた答えもあれば、そうでない部分もけっこうあって。多分監督の中に、その段階で言葉にするべき感覚と、言葉にするという選択をまだすべきではない感覚とがあるんだろうなと感じたので、これは現場に行かないとわからないなという状態ではありました。

 唯野未歩子さん(ノロの母親役)と一緒に監督の家(高知県の四万十川のほとりにある、甫木元監督の祖父の家。ここで『はだかのゆめ』を撮影した)を初めて訪問したときに、脚本の中の言葉や雰囲気が土地と結びついて、「あ、こういう感覚をこの作品で描きたいんだろうな」と肌で感じることができたんです。

――制作段階から監督と俳優が言葉ではないものを分かち合っていたんですね。『モアザンワーズ』もそうでしたが、『はだかのゆめ』も、言葉では表現できない時間と感情を映像と音楽で表現しています。

 本当にそう思いますし、そういう総合芸術といえる作品に巡り合えることに、一番幸せを感じます。俳優は他の人の言葉を借りて演じる仕事なので、演出はもちろん、ロケーションやセット、衣装やヘアメイクなどのすべてが1点に集まっている現場でお芝居ができたら本当に理想的です。でも、すべての現場でそれを実現できるわけではない。だから『モアザンワーズ』や『はだかのゆめ』のように、自分が物語の軸になる役をやらせていただく現場がそういった体制や環境だと、本当に恵まれているなと思います。

2022.12.03(土)
文=須永貴子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=小笠原吉恵(CEKAI)
ヘアメイク=嵯峨千陽