北欧の国・スウェーデンには、「世界一臭い食べ物」と呼ばれる缶詰がある。その名も、シュールストレミング缶。

 ニシンを塩漬けにしたものなのだが、缶の中で発酵が進むため、強烈な臭いが発生する。開缶の際には、細心の注意を払う必要があるデンジャラスな缶詰だ。その「世界一臭い食べ物」というキャッチコピーから、怖いもの見たさに挑戦する人が後を絶たない。

 そんなシュールストレミング缶が、東京・六本木にあるスウェーデン大使館の自動販売機で購入することができるというツイートが注目を集めた。

 これは、スウェーデンの食文化を広める「TRY SWEDISH!」プログラムの一環で設置されたオリジナルの自動販売機なのだそう。シュールストレミング缶の存在ばかりに意識が向いてしまうが、他にもさまざまなスウェーデンの食品・雑貨が並んでいることが分かる。

「シュールストレミング缶だけじゃない」スウェーデンの食文化について、スウェーデン大使館商務部の辻治樹さんに、お話を伺った。

シュールストレミング缶はスウェーデン版の「くさや」?

――シュールストレミング缶は、もともとスウェーデンの伝統料理ですよね。

辻治樹さん(以下、辻) そうですね。バルト海で春にとれたニシンを塩漬けにして、数カ月寝かせる。徐々に発酵が進み、8月3週目の木曜日にシュールストレミングの初物をみんなで食べる、というのがスウェーデンでは伝統となっています。

 ただ、あくまでもスウェーデンの一部地域での伝統的な食べ物なんです。なので、スウェーデン人でも食べない方が多いですね。日本だと「くさや」に近い立ち位置かもしれません。

――実際に購入して食べるときの注意点はありますか?

 冷蔵の状態では発酵が止まっているのですが、常温になると発酵が進みます。発酵が進むと、缶内にガスが充満してくるので、開けたときに汁が飛び散ってしまうんです。服にでもかかってしまうと、1週間くらいは臭いが落ちなくなってしまうので注意が必要ですね。

2022.08.27(土)
文=早川大輝