通常、スウェーデンでは、水の中でガスを逃がすようにして缶を開けます。水の中で開ければ、臭いはほとんど出ませんよ!

――なるほど、安全な開け方がちゃんとあるんですね。

 酸味や塩味が強いのでそのままでは食べにくいですが、そこまで過激な食べ物でもないんです。

 

 食べ方としては、ツンブロードという大麦ベースのパンにバターを塗り、その上に皮を剥いでみじん切りにしたシュールストレミング、新じゃが、紫玉ねぎ、サワークリームを乗せて食べます。味もマイルドになりますし、アンチョビのようなしょっぱさと旨みが出るんです。

 あとは、スウェーデン人の同僚に聞いたものだと、「ヤンソンの誘惑」というポテトグラタンのような伝統料理がありまして。その中に、シュールストレミングを入れて食べることもあるそうですよ。

――やっぱり、そのまま食べるのではなく、可能な限り臭みを消して食べるものなんですね。どうして、スウェーデンではこの缶詰が食べられてきたのでしょうか?

 諸説あるのですが、スウェーデンは寒冷の気候により農作物に適した土地に限りがあり、かつ冬が非常に長いので、保存食に頼っていた時代が長かったんです。

 16世紀ごろ、船乗りが保存のために、ニシンを塩漬けしていました。しかし、その当時、塩はとても高価なものでして。コスト削減のために塩を減らしたら、発酵がかなり進んでしまったんですね。それを港でフィンランド人に売ったところ、意外にも「美味しかったからもっと売ってくれ」と言われ、作り始めたと聞いています。今のような缶の形になったのは、19世紀頃らしいです。

スウェーデンならではの商品が並ぶ、世界に1つの自動販売機

――スウェーデンの食文化の中でも、シュールストレミング缶は定期的に大きな話題になりますよね。

 スウェーデンの食文化はなかなか知られる機会がないので、シュールストレミング缶を入り口にスウェーデンの「食」についても興味を持ってもらえたら、とても嬉しいですね。

2022.08.27(土)
文=早川大輝