モヤモヤしながらも生きていく力強さを尊重したい

――初の単行本、どんなふうに読んでもらいたいというのはありますか?

 実際に今学校に通っている女の子にももちろん読んでもらいたいと思いますし、同世代の働く30代の女性のみなさんにも読んでもらいたいですね。

 今振り返ると、なんであんな小さいことで悩んでいたんだろうって思うんですが、学生時代は学校がすべてだったし、友達関係がうまくいっていないと、凄く孤独を感じてしまいますよね。

 私はそういう孤独感とか仲間同士のいざこざとかそういう問題が、いつか努力していれば解決するから前を向いて頑張っていこう! みたいなメッセージを届けるつもりはなくて。この中の登場人物のように、モヤモヤしながらも生きていくことの力強さを尊重したい。そうして悩みを抱えながらも前を向く彼女たちの姿が少しでも今を生きる女性の力になったり、自分と重ね合わせてくれればと思います。

 そういう意味では、2度通して読んでもらえるとうれしいですね。単行本には4編の物語が入っていて、1章ずつ話は完結しています。1つずつの読後感と、4章すべて読み終えた時に心に湧き上がってくるものが違うと思うんです。それぞれの物語で主人公のキャラクターが全然違うので、一回読み通した後に、改めて彼女たちの物語を振り返るとまた違う視点が見えてくるんじゃないかと思います。

――今後の展望や目標を教えてください。

 思いもよらぬ縁でこうして小説を出版することになりましたし、小説を書く仕事も役者の仕事もどちらも頑張っていきたいです。

 小説を書くことで学んだ気持ちや感情の表現の仕方をお芝居にも活かしたいなと感じた部分もありますし、お芝居をすることで小説を書くエネルギーが沸いてきたり、イメージが膨らむこともある。バランスを取りながらどちらにも活かしていくことができたらと思っています。

 次に小説を書くときにはミステリーとかもう少しエンタメっぽいのにも挑戦してみたいです。今回は少しテーマが暗かったので、明るい作品もいいですね(笑)。

柊子

1991年9月29日奈良県出身。2007年映画『那須少年記』でデビュー。2015年、NHK連続テレビ小説「まれ」に出演。主人公の先輩パティシエ・矢野陶子役で注目を集める。その後も映画『結婚』、WOWOW連続テレビドラマW「コールドケース2」などに出演。俳優業のかたわら、10代より数々の作詞も手がける。

『誕生日の雨傘』

定価 1,650円
株式会社文藝春秋

2022.09.10(土)
文=CREA編集部
写真=今井知佑