近年、北海道のワインに注目が集まっている。既に知られている空知や十勝だけではなく、西に南に新風が吹いているのだ。
中でも注目なのが函館。東北以北で唯一の開港五港である函館には、ここでしか飲めないワインが揃っており、新たなワイン文化を拓く素地があるのだ。
とっておきのワインが楽しめるレストランと、絶品のチーズやパンが買えるお店を6軒ご紹介。
道産素材の魅力を再発掘する名店
◆Colz(コルツ)

「函館ならコルツへ!」はもはや標語だ。メインのジビーフは、襟裳岬にも近い様似(さまに)町で完全放牧にて育てられたアンガス牛だ。
サシがほとんどなく、筋肉質で火入れが難しいシェフ泣かせの肉でもある。

最近、佐藤雄也シェフは火入れを変えた。肉を軽くオーブンで火入れし、温めた土鍋に入れて2~3時間。最後に鉄のフライパンで焼き目をつけて仕上げる。
イタリア料理店として認識されているが、この手法はイタリア料理のそれではない。

「イタリア料理の本質は地方の食の継承と再生」だと捉え、むしろ地域の食材をどう生かし切るかに目を向けた。

合わせるワインも見直した。「牛だから赤ワイン」という固定概念を捨て、「農楽蔵」の佐々木夫妻も交えて何本も飲み比べ、余市産のミュラー・トゥルガウ100%の“はがいくぶらん”を選んだ。

様似の野草を喰んだ牛に函館で火を入れ、余市産ブドウの白ワインを函館で醸す。嚙みしめるほどにジビーフからじりじり味が沁み出す。ゴクリ。
口内に余韻が残るころ、“はがいくぶらん”で洗い流すと、肉とワインの美しい記憶だけが鮮明に残る。やっぱり「函館ならコルツへ!」なのだ。

Colz(コルツ)
所在地 北海道函館市本町4-10
電話番号 0138-55-5000
営業時間 12:00~13:00 L.O. (水~日曜)、18:00~20:00 L.O. (火~土曜)
定休日 日曜のディナー、月曜、その他不定休
※グラスワイン 550円~、デキャンタ500mL 1,800円~。
https://www.facebook.com/Colz-コルツ-2236686616546629/
2022.07.27(水)
Text=Tatsuya Matsuura(babakikaku)
Photographs=Takashi Shimizu
CREA Traveller 2022 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。