今年の夏は地球を感じ、自然と一体化できる宿へ旅に出てみませんか。
雄大な大自然の中、名湯に身をゆだねれば、心も体もデトックス。そんなエネルギーをもらえる温泉宿を5軒ご紹介。
原始の森に抱かれた、静かな湖畔ステイ
●界 ポロト[北海道/白老温泉]
![ポロト湖と樽前山が一望できる特別室の露天風呂。世界でも珍しい太古の植物由来有機物を含有するモール温泉を、ひとり占めできる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/e/1280wm/img_dedee28008a838b0265c55240fb42c20138558.jpg)
モール温泉と湖が ひとつになるような錯覚
視界すべてに大自然が広がるような場所に行きたい。雄大で、空気が澄みきっていて、心ゆくまで温泉に身を任せられる所へ。そんな思いで向かったのは、北海道・ポロト湖畔の宿だ。
南西部に位置する白老町の市街からすぐの場所にありながら、原始の自然休養林や湿原が周囲に広がるポロト湖。アイヌ語で「大きな沼」という意味をもつこの湖のほとりに今年開業したのが「界 ポロト」だ。全室レイクビューというロケーションに加えて、世界でも珍しいモール温泉が楽しめる。
![敷地内にポロト湖を直接引き込み、館内各所に何本ものシラカバやトドマツの丸太を配した大胆な設計デザインにより、施設のどこにいても自然の中を歩いているよう。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/3/1280wm/img_835da7bab1efe31c45aea2cba0b9e8c5184282.jpg)
客室に足を踏み入れたとたん、大きな窓いっぱいにポロト湖の景色が広がる。湖面を渡る銀色のさざなみ、緑豊かな森林。まるでプライベートレイクのような贅沢さだ。湖面にせり出すとんがり屋根は、モール温泉の湯小屋「△湯」。太古の植物に由来する有機物が含まれ、“美肌の湯”ともいわれるモール温泉は、茶褐色の湯がとろりとなじむような肌触り。露天風呂の先はポロト湖へと続き、湖面を漂うような解放感が湧き上がってくる。
![「△湯」では、源泉かけ流しの内湯や湖にせり出した露天風呂で美肌の湯といわれるモール温泉を堪能。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/1280wm/img_303ce43b2e2bb35770f04a3f8b4c24b3104037.jpg)
![アイヌ文化の建築特徴である丸太組みの三脚構造「ケトゥンニ」を基本構造としたとんがり湯小屋。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/1280wm/img_43966da7fb93313dd101a7fa63f9e3c5113377.jpg)
夕食までの時間は、窓辺のソファでのんびりと。刻一刻と色合いを変えていく初夏の夕空が美しく、雲の流れにも北海道のダイナミズムを感じる。その豪快さは、夜の食事にも。北海道ならではの食材をふんだんに使った会席料理で、メインは、毛蟹や大きな帆立貝が丸ごと入ったブイヤベース仕立ての「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」。程よいサイズの地酒の飲み比べセットを合わせ、ひとりでじっくりと味わう。
![客室はすべてレイクビュー。アイヌ民族の伝統的住居「チセ」から着想を得て設計。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/d/1280wm/img_3ddef8cc974a1745dd01c1fddb6b93b0103126.jpg)
![夕食は北海道の食材を生かした会席料理。特別会席の「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」は海の幸のスープが濃厚!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/1280wm/img_7d5360f018d69f0c1437a15e42ea28bb137683.jpg)
ポロトの自然が心まで解放してくれる
![地魚アブラコの焼き物など、朝食にも多彩な地の物が。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/0/1280wm/img_e0ed9209fd3d474939585eaca4d30711176892.jpg)
こわばりかけた心と体が 朝日とともに目覚める
寝しなにもうひとつの湯処「○湯」で温まった効果なのか。驚くほどぐっすりと眠り、気持ちよい目覚めとともに朝を迎えた。朝食前に散歩しようと外へ出ると、迎えてくれるのは静かな湖に響き渡る様々な鳥たちのさえずり。湖の周囲には美しいポロト自然休養林が広がり、軽いトレッキングが楽しめる。湧水が流れる湿原にはミズバショウが咲き、ミズナラやクリの巨木は空へと背を伸ばす。遠くには樽前山の稜線がくっきり描かれていた。
![競走馬の生産地として知られる白老町。天気の良い日には馬たちに出合えるかも。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/f/1280wm/img_af16445ae5d44d0d6bfcbd49cb344621204303.jpg)
![ミズバショウの群落が見られる湿原や原始性に富んだ森林が残るポロト自然休養林。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/3/1280wm/img_b38a23c17aac285336a122f256fbdfa0225355.jpg)
宿に戻る道すがら、青空と森の緑を映す湖面を眺めながら、思い切り深呼吸。息苦しい日常のなかでこわばりかけていた心身が、解放され、新しく目覚めていく。そんな時間が、夏の光さしこむ湖のほとりに待っていた。
![コーヒー片手に読書が楽しめるトラベルライブラリー。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1280wm/img_7e727ef00bfa591b6792505ba16087d4150224.jpg)
星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」。各地の個性的な伝統工芸、芸能などを満喫できる「ご当地楽」や、その地域に根ざした設いを楽しめる「ご当地部屋」など、地域の魅力と湯治文化を大切にした宿づくりが魅力だ。「うるはし現代湯治」は、現代人の生活にフィットした湯治プログラム。温泉の泉質などの知識をもつ「界の湯守り」が「温泉いろは」や「現代湯治体操」を紹介してくれるほか、施設ごとの「お湯印」を集めることができる「お湯印帳」なども用意されている。ひとり旅でのおこもり滞在にぴったりな「おひとり温泉休息プラン」も人気を集めている。
●湯冷ましつぶやき
モール泉は保湿液のようにとろみがあるのが特徴。湯から出た際には足がすべりやすいので注意。
界 ポロト(かい ポロト)
所在地 北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
電話番号 0570-073-011(界予約センター)
ひとり料金 1泊2食付き 39,000円~
ひとり対応 通年
アクセス JR白老駅から徒歩10分
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
●推薦してくれたのは……
山路美佐さん[B.EAT代表]
2022.06.27(月)
Text=Yuko Harigae(Giraffe)/界 ポロト、Chiaki Tanabe(Choki!)/山里のいおり 草円
Photographs=Tetsuya ito/界 ポロト
CREA 2022年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。