――スライムはつけてほしくないですね~(笑)。 

鳥居 うちの姉がね、子育ては大変だけど、一旦叔母である私の立場に立ってみて、親だってことを忘れてみようと思ったんだって。「私は叔母だ」って思ったら、子どもに優しくできると。

 ソファーに付いたら嫌だから、スライムはやらせてなかったけど、叔母の立場だという風に自分を説得したら「ああ、酢水を使って落とせばいいや」という思いに変わったって。 

――発想の転換。 

鳥居 1個隔てると、許容量が大きくなる、許せるようになると言ってましたよ。 

――そうなんですね……スライムつけちゃってもいいと思えるの素晴らしい……。 

鳥居 ただ、その後、酢水で落とそうとしたけど全然落ちねえって怒ってました。めっちゃ怒ってました。「スライム禁止!」って言ってました(笑)。 

――(笑)。鳥居さんのお話を伺っていると、子育ても自分の人生も、考え方ひとつで違って見えるような気がして不思議です。生きづらい世の中を反対側からのぞくような感覚。 

鳥居 でも……生きづらいって感じてる方が、生きてる感じしませんか。 

――ああ。 

鳥居 生きやすいってなると、退屈で、あんまり生を実感できない気がして。だからいいと思います。なにかしら私はもがいて生きていこうと思っています。 

写真=鈴木七絵/文藝春秋

2022.06.18(土)
文=西澤千央