鳥居 今は誘われた瞬間に「ああ、たぶんその時になったら行きたくなくなるから行かない」って言える(笑)。 

――それは「子どもの鳥居さん」がそうさせる。 

鳥居 そうなんです。子どもの頃は「やだ、行かない」ってストレートに言葉を投げつけるほうだったんですよ。それで大人になったら「ああ、行きましょう、行きましょう」と言って、行かない理由を考え始める。だから今一番いい状態、大人と子供の(笑)。 

みんなが求めているものに寄せてしまう

――「鳥居みゆき」というキャラクターを手に入れたことで、生きやすくなった部分はありますか? 鳥居さんにとって「鳥居みゆき」という存在はどのように作用しているのか。 

鳥居 鳥居みゆきは毒でもあり薬でもありますね。 

――どういうことでしょうか。 

鳥居 「鳥居みゆき」にとらわれすぎると、単独ライブでも「みんながこういう作品を求めてる」って思うものに寄せていきがちになっちゃうんですよ。 

 でも鳥居みゆきになにを求めるかって、それも人によって違う。たとえば内村(光良)さんが思ってる鳥居みゆきと、有吉(弘行)さんが思ってる「鳥居みゆきってこんなんだよね」は違う。 

 

 鳥居みゆきであることがいい方向に作用することもあれば、自分を苦しめることもあるので、毒でもあり薬でもあるという感じかな。 

――薬になる時の「鳥居みゆき」とは? 

鳥居 自分が無理してない状態で笑いが生まれた時。「今のは鳥居みゆきらしくなかったな」なんて悩むというのは、毒でしかなくて、「鳥居みゆきっぽくてよかったな」という時が薬ですよね。毎日それの繰り返しです。 

 やっぱり人と会う時はね、鳥居みゆきでいないとというのがあるので。ただもし尺が5分しかないのなら、鳥居みゆきのテンションをすっごいギューギューに詰め込んでいけるんですよ。でもそのテンションで1時間お願いしますという時がすごく辛い。「ずっとそんな私のわけないじゃん」なんですよ。 

2022.06.18(土)
文=西澤千央