子供の頃めちゃくちゃ好き嫌いがあったんですけど、大人になったら「この苦さがいいんだよ」と食べられるようになって、味覚が鋭くなったんだと思ってたんですね。 

 でもそれ、進化じゃなくて退化なんじゃないか。味覚が鋭くなったわけじゃなく、むしろ子どもの頃の味覚の鋭さがなくなったからこそ、これが食えるようになってんだ、と思い始めた。

――なるほど。 

鳥居 逆に鈍くなってるから、これも食える、あれも食えるになってる。 

 子どもの時は、ほんとに純粋で「嫌だ」という感覚が明白じゃないですか。大人になってそういう気持ちを忘れちゃってたなと思って。 

 それで最近は結構素直になってきて。殺しちゃった子どもの時の私、生きづらくてひたかくしにしてきた短い幼少期の素直な自分を、今生きてもらってる感じ。 

――生きるために「殺して」しまった子どもの時の自分を取り戻してる。 

鳥居 大人になって、なんとなくうまくいく術を身につけたので。うまくいく術を身につけた上での、子供の素直さだったらいいだろう、みたいな(笑)。だから今、子ども時代を生きてます。 

 

「ちょっと考えさせて」が言えるようになった

――子どもの自分で生きていくことによって、鳥居さんの中で何か変化はありましたか。 

鳥居 すごく楽になりました。例えば何か答えを求められた時、なんでもいいからすぐ答えなきゃって思うことがなくなりました。「ちょっと考えさせて」ということがあってもいいんだなっていう。

 ああ、人って待ってくれるし、もうちょっと人を信頼してもいいのかな、と思って。それで、ちょっと人に対しても興味が湧いてきました。 

――今までそんなに人に対して興味がなかった? 

鳥居 なかったです。ああこういう人もいるな、面白いな、というのはありましたけど。誰かとすごく仲良くなりたいとかがないんですよ。ご飯の約束とかしても、断わる理由をそこから探しちゃってた。 

――(笑)。約束した瞬間から探しちゃう。 

2022.06.18(土)
文=西澤千央