遠山さんが選んだお弁当 BEST3
<印象的だったお弁当>
荒巻洋子さんの【スイカの弁当】
トラッドマインドをトラッドとマインドに分けて考えて、トラッドは「伝統的」、マインドは「心」、「心は丸い」と連想したお弁当。スイカを包んだふろしきと日本の夏の伝統的な食べ物のスイカでトラッドを表現し、ラップで丸く茶巾にしたゼリー寄せでマインドを表現した。心には芯があるということで、ゼリー寄せにはそれぞれ具を入れ、うずらの卵のポーチドエッグとブイヨン、ミニトマトとトマトジュース、焼きなすと枝豆としょうが風味の出汁の3種。そしてスイカのゼリーも加えた。
<おいしそうだったお弁当>
重松さんも選んでいた、竹内登桃子さんの【夏野菜の揚げびたしのつけ麺弁当】
<トラッドマインドなお弁当>
近藤千尋さんの【桐箱にアンパン弁当】
テーマがトラッドマインドということで、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』から発想。「塗り椀に羊羹」ではお弁当にならないので「桐箱にアンパン」にしてみたお弁当。お弁当全体の色味をおさえるよう、なるべく濃い目の焼き色でけしの実をたっぷりつけたアンパンと、白めのパンに発酵バターを塗って岩塩をひき、餡をはさんだアンパンの2種。日本人のトラッドマインドを意識して、瓶の牛乳を添え、母の着物の反物のあまり布で包んだ。
【遠山さんのコメント】
荒巻洋子さんの【スイカの弁当】。スイカがまるまるお弁当になっていて印象的でないという状況が想像できようか。蓋を開けると涼しげなプルプルが赤く覗く。実際にそのプルプルの丸の中身を口で吸いこむと誠に食べにくいのも印象的であったのは皮肉なものだ。
竹内登桃子さんの【夏野菜の揚げびたしのつけ麺弁当】。そうめんを弁当にするという迷惑。まあ私がご相伴に預かるわけではないのでいいのだが。そんなそうめんなのに、つけ汁がやたら多くて、シミシミな野菜がドボドボ入っていて、酸っぱ辛そうな匂いが遠目にも漂ってくる。竹内さん、このシミシミ野菜を夜な夜な一人家で食べているらしい。うらやましい。
近藤千尋さんの【桐箱にアンパン弁当】。桐箱の蓋を上にあげ、アンパンが鎮座し、かつ手作りのアンパンであること。伝統的な佇まいの中にもアンパンと言う洒脱は現代のドレスダウンのようであり、未来への無駄なきモダニズムを体現している構築的な美しさにやられた。
2013.09.19(木)
text:Rika Kuwahara
photographs:MIki Fukano / Nanae Suzuki