中村倫也インタビュー【後篇】
「犠牲なく美しいのが、一番いい」
日本を牽引する俳優が“自意識”を語る

CULTURE

2022.5.20

犠牲と美しさのはざまで「もがいた先に生まれるものもある」

――『ハケンアニメ！』には、「創作を突き詰めることは、時として時間や気力・体力といったリスクを冒さないといけないのだ」という描写もあります。このバランスはいま、問われている部分でもありますね。

　僕はシンプルな話、そんなものはあり得ないんですが――同じクオリティのものがふたつあって、かかる時間や体力が違うなら効率いい方がいいんじゃないかと思います。だけど、ずっともがいてもがいて、もがいた先に生まれるものもあるからその辺はショートカットできないときもある。

　何かを犠牲にしたから美しいという発想は僕の中にはなくて、犠牲にしないで美しければそれが一番いいじゃんって思うんです。ですが、悲しいことに犠牲にしないと美しく光らないものもあるから、ケースバイケースと思って生きています。

　現場は押すより、巻いたほうがいい。みんな生活がありますから。「今日も忙しくて、家に帰って洗濯機を回して、干して寝られなかった」というスタッフもいっぱいいますし、だけどいいものを作るために「そこは粘るよね」という気持ちもわかる。日本人的な美学みたいなものは僕は薄いけど、最終的にはいいものを撮ることができてみんなが笑顔で帰って寝られるようになればいいと思っています。

　僕個人としては楽したいけど、楽した仕事っていいものにならないと知っているんですよね。「楽しい気持ちを得るためには、楽しちゃいけない」という考えでやっています。

　世の中が全体的にリスクマネジメントの時代でもあるので、そこに抗う気持ちもないですし、いついかなる時代でも楽しいものは作れる。それをちゃんと睡眠時間を確保してみんなでやれたらいいですよね。好き好んでしんどい思いはしたくないです(笑)。

(【最初から読む】中村倫也さん、開口一番「今日も込み入った質問をする？」)

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中村倫也(なかむら・ともや)

1986年12月24日生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。近年では、ドラマ『珈琲いかがでしょう』、映画『ウェディング・ハイ』などに出演。待機作には連続ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?』(2022年７月放送予定)年配信作品『仮面ライダー BLACK SUN』 (2022年秋配信)、主演MUSICAL「ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~」(2022年10月・11月開幕予定)などがある。

『ハケンアニメ！』

2022年5月20日(金)全国ロードショー

出演：吉岡里帆　中村倫也　工藤阿須加　小野花梨　高野麻里佳　六角精児　柄本佑　尾野真千子
原作:辻村深月「ハケンアニメ！」(マガジンハウス刊)
監督：吉野耕平
脚本：政池洋佑
音楽：池頼広
主題歌：ジェニーハイ「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
制作プロダクション：東映東京撮影所
配給：東映
©2022 映画「ハケンアニメ！」製作委員会
https://haken-anime.jp/

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