アナウンサーからタレント、俳優へと活動の幅を広げている森香澄さん。映画初主演作『てんてん ずっと独身でいるつもり?』では、明確な夢や目標を持たず、仕事も居場所も転々としてきた30歳のヤマダミサキを演じています。先の見えない日々を生きる役を通して感じたこと、共演した若葉竜也さんの佇まい、そして自身も「予想外の連続」と語る仕事への向き合い方を伺いました。
大きな事件がなくても、毎日、何かと向き合っている
――本作『てんてん ずっと独身でいるつもり?』では映画の主演を初めてつとめられています。オファーがあったときは不安もあったそうですね。それでも、ヤマダを演じてみたいと思ったのはなぜでしょうか。
まず、脚本を読んでおもしろいと思ったんです。こういう群像劇はやったことがなかったので、挑戦してみたいという気持ちもありました。脚本の完成度がすごく高くて、これがどんな作品になるんだろう、と楽しみになりましたし、ヤマダを誰が演じるかとなったときに、私の名前を思い浮かべていただけたことが、すごくうれしかったです。
――脚本のどんなところに惹かれましたか?
一つひとつを、とても丁寧に描いているところですね。何かが大きく爆発するような、ドラマチックな展開があるわけではないんですけど、人が生きている中で、毎日、大きな事件が起きるわけではないじゃないですか。でも、みんなそれぞれ、何かと向き合いながら生きている。そういう日々を、説明するようなセリフではなく、会話の中で描いていくのがおもしろいなと思いました。
――ヤマダは、やりたいことが見つからないまま生きてきた人物です。彼女に共感するところはありましたか?
ヤマダが「自分は頼まれたことをやってきただけなんだ」、と若葉竜也さん演じるシバに話すシーンがあるんです。それに対してシバが、やりたかったことより、実際にやってきたことがその人の人生なんじゃないか、という言葉をかける。そのやり取りには、私自身も「あ、なるほど」と思いました。
私も、今の仕事を昔から具体的に思い描いていたわけではないんです。会社を辞めてフリーになったときに、数年後に映画で主演をさせていただくなんて、全く想像していませんでした。美容誌『美的』の表紙をやらせていただいたこともそうですし、本当に予想外の連続です。
――次々と来るオファーを、一つひとつ打ち返しているような感覚でしょうか。
何かと闘っている感覚ではないので、あまり「打ち返している」という感じではないかもしれません。
今回のヤマダもそうですけど、「森香澄に演じてもらいたい」「演じたら、いいものになるんじゃないか」と思って、お話をくださっていると思うので、その期待には応えたいです。ただ、すべてに応えられるという自信を持って進んでいるわけではなくて。皆さんの力をお借りしながら進んでいくほうが、自分には合っているのかなと思います。
――予想していなかった道を進むことに、不安はありませんか?
私は結構、楽しむタイプですね。予想できないからこそ、いただいたお仕事を丁寧にやる。それが次につながることもあれば、つながらないこともあるのが、仕事なのかなと思っています。将来を案じて不安になるというよりは、今いただいている仕事をどう生かせるのか、どう自分のものにできるのか、どう向き合うべきなのか。それを考えることに必死ですね。
文=高田真莉絵 写真=平松市聖 ヘアメイク=高橋莉乃 スタイリスト=大山諒子
